読んだり食べたり書き付けたり

霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

創作

鬼のような速さで

今週のお題「鬼」で思うのは、新型コロナとそれへの研究や対応の猛スピード具合。あっという間に古びてしまうだろうから、コロナ禍下をテーマにした創作SFは薄い本にするつもりなく、ブログ以外ではサークルの月報のようなものに専ら載せているのだが、それ…

天使と社畜

岸壁の下、うつ伏せで浮かぶサンタクロースを見下ろしてトナカイのルドルフは叫んだ。 「これで解放されるぜ! 野生動物なのに社畜にされるのも、もう終わりだ!」 同僚のトナカイであるダッシャーが呼応する。 「楽しい秋に、休日返上でおもちゃや材料を工…

『赤毛のアン』の二次創作を見る思い

Netflixの『アンという名の少女』、アン・シャーリー役やリンド夫人役が子どもの頃から想像していた見た目にぴったりで、最初は喜んで見ていました。高畑勲さんが見ていたら嫉妬してしまうんじゃなかろうか、と思ったくらい。マリラとマシューが綺麗めなのを…

レッツ軽率ライティング!

例年なら古本まつりの神保町、今年は「神保町ブックフリマ」と、 note.comと「おもしろ同人誌バザール」が開かれました。 hanmoto1.wixsite.com どちらも新型コロナ感染防止対策が取られていて安心。といっても前者は「本の雑誌」社さんにしか行かなかったの…

黒タピオカ入りバニラミルクの精

オフィスビルの10階でひとり深夜残業していたコロナ禍の、残暑厳しい秋の夜だった。ベランダ方面から窓になにかぶつかる音がするので振り返った。うわっ、誰かいるし、窓ガラスこつこつ叩いてる!強盗か? しかしそいつは強盗にしてはおしゃれすぎる格好をし…

安野モヨコ ANNORMAL展@世田谷文学館

◆会場にて 安野モヨコ展、素晴らしかった〜。平日だからか人も少なくて、ゆっくり見られました。殺人的に暑い日だったので(ってもうここしばらくずっとですが)、会場の世田谷文学館最寄りの芦花公園駅に着いて、まずはレモンミルクのかき氷。すごく暑い日…

バレエ鑑賞と「STAY HOME」その2

お題「#おうち時間」はわたしには訪れないまま、五月が終わろうとしていますが、なんとなく休みの日にはネットでバレエを見る日が多くなってきたかも。というわけで最近見てよかったもの。 ◆イングリッシュ・ナショナル・バレエ(ENB)『NORA』(公開終了) …

『シュヴァルの理想宮』@恵比寿ガーデンシネマ

映画『シュヴァルの理想宮 シュヴァルの理想宮』本編映像~理想宮作り~ 奇人変人を見に行ったはずなのに、世の生きにくさと死による救いに泣かされて帰ってきました。おかしいな……。 クリスマスに見ようと思っていたわけではないのですが、ちょっとしたこと…

同人誌の文字校正

12月18日、待降節もクリスマスまで一週間ほどになりました。このエントリは書き手と編み手の Advent Calendar 2019の18日目です。 adventar.org 一昨年の編集とライティングにまつわるアレコレ Advent Calendar 2017には「国政選挙は新聞社の『まつり』」で…

冬コミ予定はコピー誌

夏コミで暗黒通信団から『クズ度で見る古典バレエ』を出しましたが、冬コミは神戸暗黒通信団からコピー誌を出す予定です。 これ↓はボツにした表紙案。ある意味、闘病モノですが、暗くはないです。タイトル・書影などはまた後日! https://twitter.com/kobe_a…

高畑勲展@東京国立近代美術館

終了直前ギリギリに高畑勲展。けど、天才の仕事を、天才性の求められない仕事をしている凡人が仕事前に見るもんじゃないですね。仕事とは……。仕事って、なんだっけ……。みたいなことになるので。 というのも、とにかくその才能と容赦ない仕事ぶりに圧倒される…

老後の計画に理想などない

今週のお題「理想の老後」と言われてふと気づきました。なんとワタクシ、あと五年で池内紀さんが東大を早期退職して「隠居」に入った年齢になるではないですか。 でも当方、凡人なので、五年後も今の仕事を変わらず遊び気分で(霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツ…

同人誌 新・旧、その他の日記

・その1:C96を終えて 夏コミ打ち上げで知った、校正すべきもう一つのテキストの流れが手違いで堰き止められてたという事実に気が抜け、眞踏珈琲店さんでコーヒーゼリーとジョージ朝倉の描くかわいい女の子に耽溺していたら、ゲリラ豪雨で傘をお借りする羽…

夏コミ直前! 新刊のお知らせ再び

C96夏コミ、Mmcの新刊は『クズ度で見る古典バレエ』、16ページ、予価200円です。日曜西館あ09bの暗黒通信団で出品します。 ロマンチックで優雅なはずの古典バレエの王子さまたちは、現代の基準から考えたら軒並みクズ?! その上、クズというよりワルでしか…

夏コミ本のお知らせ

いつもバタバタだったりお知らせできないままコミケが終了したりはたまたコピー本でコミケ当日しか出さないのに事後だったりしているので、今回は早めに入稿したのを機に、夏コミ本のお知らせ。 夏コミは日曜西館あ09bの暗黒通信団で出品します。タイトルは…

事実は小説より

奇なり とは言っても、こんな奇妙な人材募集が頻発するのはどうかと思うよ! なお翌日のリアル「注文の多い出版社」。 今日のレッスン ・まず床にまっすぐ座れない ・一時間半のうち、あと四十分で脳と身体の連絡不行き届き開始 ・先生に姿勢を直されたけど…

夢で逢いましょう ~バレエ『眠りの森の美女』妄想~

m.youtube.com その1:疲労するリラの精 「今回も、だめだった……」 お見合い不成立。王子の記憶からオーロラ姫のイメージを抜いて帰って来たリラの精は、呟いて寝床に倒れ込んだ。カラボスによるオーロラ姫への死の呪いを、城内300人もの長い眠りに分割して…

小さな小さな世界「田中智 ミニチュアワールド『Face to Face』もっとそばに」@POLA MUSEUM ANNEX

コロボックルとか安房直子の小さい人、ドールハウスとかの、小さな世界が子どもの頃から好きだった。そのころは虐待とかいじめから逃避して、小さな世界に行きたいと思っていたのかもしれない。 豆つぶほどの小さないぬ―コロボックル物語 2 (講談社青い鳥文…

なんでも雑誌化

趣味で活動しているコミケサークルの注文書が、「月刊暗黒通信団の注文書」という名前になって雑誌と化したのは、いつからだろう。少なくとも何年か前に吉祥寺のジュンク堂書店に営業に行った際の注文書は、ふつうに新刊情報のみが載っていたのだが……。 2017…

新作ピーターラビット映画

以前、ピーターラビット側からではなく、ピーターラビットたちに目を付けられた人間側からの短編を書いた。 mmc.hateblo.jp それに文芸同人誌用に手を入れてしばらくして、実写+CGのピーターラビット映画が作られていることを知った。海外版予告編を見る限…

いえのそとへ 《連作短編集「デッドロックのはずれ方」6・終》

「西野さん、職員室まで、ちょっと」 部室に行こうとカバンとフルートケースを提げたところに、顧問の内田先生が眼鏡を押さえながら走って来て真顔で言った。 (なんだろう、こないだラブホに入ったのと、男子にそのお金出させたのがバレたのかな) そんな懸…

歩幅の違い 《連作短編集「デッドロックのはずれ方」5-2》

翌日の昼休み、実佳は理科準備室兼、数学部の部室に向かっていた。詩緒を教室に訪ねて行ったのだが、昼休みも放課後も数学部にいると言われたのだ。 「誰かいますかー?」 昨日の久実の話の衝撃で、だれかが昼休みデートしている現場に踏み込んだら、と部室…

歩幅の違い 《連作短編集「デッドロックのはずれ方」5-1》

受験が終わった。久実、実佳、詩緒はそろって見学に行った高校に受かり、それぞれ別のクラスになった。久実と実佳は吹奏楽部に、詩緒は理数系でもないのに、なぜか数学部に入った。 実佳が、奇妙な気配に気づいたのは夏休みのあとだった。正確には、久実とい…

いえのなか 《連作短編集「デッドロックのはずれ方」4-2》

「おかえりなさい、吹奏楽部、どうだった?」 まだ、ローファーを脱ぎ終わらないうちにキッチンから出てきた母は、久実に近づいた。 「うん、楽しそうだったよ」 「おやつ、食べるでしょ?」 「あ、実佳たちと食べたから」 「……そう」 一気に母のテンション…

いえのなか 《連作短編集「デッドロックのはずれ方」4-1》

「じゃあ月曜にねー」 詩緒がバスの中から手を振り、実佳と久実も手を振った。バスがのそりと車線に戻る間に、二人は歩道を走って歩道橋まで行き、階段を駆け上がると手すりに肘をのせ、そこに顎をのせて、そこからバスを見送った。 「今日、なんかごめんね…

手の重さ 《連作短編集「デッドロックのはずれ方」3-2》

「この曲、終わったら音楽室に入って聞こうか?」 「だね、そろそろあの曲を歌う順番なんじゃない?」 実佳と詩緒が小声ではしゃいでいる。そういえば曲は、休みにみんなで見に行った映画の曲だ。吹奏楽部見学のお知らせには、演奏をバックに見学者全員で歌…

手の重さ 《連作短編集「デッドロックのはずれ方」3-1》

久実は音楽室のある四階手前の踊り場まで一気に駆け上がり、そしていきなり座り込んだ。 (なにも知らないくせに!) (だからバカで愚鈍な男子ってキライ!) (なにが久実ちゃんだっての!) 怒りと憤りの思いとともに、フルートを強弱つけて吹くために鍛…

妹なんかじゃない 《連作短編集「デッドロックのはずれ方」2-4》

今日の午後、学校はにぎやかだ。グラウンドで駆け回るサッカー部員たちがあげる声が窓から入ってくる。体育館からはバレー部とバスケ部の試合が交互にセットされ、売店にパンを買いに脇を通ると、シューズが床を鳴らす音がキュッキュと響いてくる。 東校舎で…

妹なんかじゃない 《連作短編集「デッドロックのはずれ方」2-3》

おっさんがかあさんといつから付き合い始めたのかは、よくわからない。もともと大工として作り付けの家具を直しにきたらしいが、かあさんと籍を入れるまでは、家に泊まっていったことが律儀にも一度もなかったからかもしれない。 かあさんは俺を連れて実家を…

妹なんかじゃない 《連作短編集「デッドロックのはずれ方」2-2》

その翌日、おっさんといつもの週末の食料買出しに出かけた先で、俺は西野久実とその母の買い物風景を見た。見た、というか、見られた、というか。先にこっちに気づいたのは西野母らしい。俺がおっさんに、「ねえ、なんかすっげえ睨んでるおばさんいるんだけ…