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霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

『8 1/2』@イメージフォーラム

8 1/2 愛蔵版 [DVD]

お話はずーっと主人公の映画監督視点で進むのだが、彼が空想と現実を行ったり来たりがめまぐるしい。しかし、だんだん空想に飛ぶ回数と時間が多くなって行き、映画は混沌として行きながらもモノクロで見ていることを忘れるくらいにきらびやかになっていく。


が、しかし、この映画に影響された映画監督の作品があまりにも多いためか、25年ぶりにスクリーンにかかったというの映画を初めて見るわたしにとっては既視感にあふれた鑑賞体験になってしまった。自分の頭のなかの引用に彩られない、まっさらな状態で見てみたかった! まさに目覚めて見る夢そのもののこの作品に、ほかの夢が混入してしまうのは実にもったいない。


ちなみにいちばん思い出してしまったのは『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』。あのハーレムのシーンと言ったら! というか、押井映画の夢モノはどれもかなり強烈に『8 1/2』に影響されているんじゃないかなと感じた。

『カミングアウト・ウェディング / Out at the Wedding』@スパイラルホール

大トリだから絶対混むはず… と、暑いなか、お昼過ぎにまずは整理番号をもらいにスパイラルへ。『シェイクスピアと僕の夢 / Were the World Mine』のときよりぜんぜん前の番号なので安心していたけど、マメヒコでお昼とお茶をすませてフェリーニを見て向かったら、すごい混雑! あらためてスケジュールを見たら、オープニング時含めて2回上映した『シェイクスピアと〜』とは違って、ほんとにクロージングの1回しか上映しないのね。そりゃ混むわ。


ロビーには毎日ルピシアの茶葉がお試しで三種類置いてあったのが、この日はボディショップネロリジャスミンのシリーズをイメージしたジャスミンティーのティーバッグが置いてあって、ひとついただいてから席へ。女子二人組みとかグループが多くてみんな楽しそう。というか実際この映画は一人より二人、二人より大勢で見るほうが楽しかったかも…。


お話は、白人中流家庭出身の姉娘・アレックスが婚約者が黒人でユダヤ教徒だと家族に打ち明けられないでいるうちに、榎本加奈子か痩せてる時の上原さくらライクな高飛車お姫様キャラな妹・ジーニーの結婚式当日、間の悪いゲイの親友・ジョナサンの失言からレズビアンだとうわさを流されてしまい、その上それを妹の結婚式を邪魔するためのネタだと思われたくないがためにレズビアンを雇って恋人のふりをしてもらう羽目に… 

最終的にはすったもんだあった挙句ハッピー・エンドなんですが、そのすったもんだっぷりがかなり手に汗握らされ、かつ爆笑もの。実はわたしはアメリカのTVドラマのおおげさな展開が苦手であまり見ないのですが、この映画に関してはおおげささがラブ・コメ的展開にマッチして、とても楽しめました。


もうひとつはこの作品、楽しいばかりじゃなくて、アレックスの親への偏見が実は自分自身が持っている偏見の映し鏡だと気づかされたり、妹も自分もおたがい仲良くしたいのにできないのはなんでなんだろう、と落ち込んだりと、この思いがけないレズビアン騒動を通して彼女が目を背けてきたいろいろに気づいていく過程が効いているから。


それにしても、アレックスとジョナサンがレズビアンを雇う話をしてるときに突如現れる『カウガール・ブルース [DVD]』でのユマ・サーマンの髪をブルネットにしてもっとガタイよくカッコよくしたみたいな、つまりは「お姉さま」好きな気のある女子ならぽわんとなってしまうであろう「彼女」の無印っぽいえんじ色Tシャツに「I can't even think Straight」って書いてあったのには超笑いました。


それにしてもほんとにこれ、レズビアンもゲイもノンケも爆笑したあとにっこりできる素敵な作品だったと思います。『シェイクスピア〜』は「ほんと、どこかで上映すればいいのに!」と思ったけど、『カミングアウト・ウェディング』は絶対にどこかで一般上映するべき!


映画の公式サイトはこちら>
http://www.outatthewedding.com/