『夢のような幸福』
妄想する楽しみ、というものの結果は、オタク文化の隆盛とともに表に出、さらにBLのようなかたちで市場にも出回るようになっている。
けれど、三浦しをんのウェブ日記をまとめたこの本は、妄想する楽しみそのものの喜びとおかしみを思い出させてくれる。作家とその友人が妄想するネタは、ほんとに些細で、時には作家がその弟に疎んじられるのもさもありなんと思うくらい、ささやかなのだが、それだけに、「原・楽しみ」とでもいうべき感情がストレートに伝わってくる。表紙の装画そのものの、ほんわかした世界が広がっているのだ。
しかしこの本は、平和でありつつ、それだけでは終わらない。なんとなくつまらない、とか腑に落ちないことがあった日に、夕食後、おいしいお茶でも淹れて読み始めたら、数分後にはひとりでいるにも関わらず、にやにやしたり、くすくす笑ったりしているかもしれない。
って、わたしがそうだったんですけどね。