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つむじ風が台風になる舞台の中心は4人

日本人メインの観客の前で、日本人の役者と日本語のせりふメインで成立した、最少の役者による最大の効果。海の向こうとマレビトが登場する円還する物語構造は、どうしてもわたしに「澁澤龍彦的なるもの」を思い出させます。

英語でイギリスの役者+野田秀樹で上演されるロンドンバージョンと、タイ語でタイの役者でのタイバージョンも事前に上演されていましたが、わたしの場合、この日本語バージョンしか見ていません。なので、限定された感想になるけれど、拡げるともっと大きくなる折り紙の箱が、いちばんちっちゃく畳まれた中から、いろんなものがぽんぽん飛び出てはしゅっしゅっとまた吸い込まれて、べつのものがまたぽんぽん出てくるという、サプライズに満ちた舞台でした。

最初にコクーンに入ったとき、観客席の大きさと舞台の小ささの対比から感じた心配は、まったくの杞憂でした。たった4人の役者で、つむじ風が運んできた蜃気楼のように、海辺の小集落が現前してしまうという、生の舞台ならではのミラクルが楽しめます。そして観終わっての気分は、台風が過ぎた後の、あの物寂しいような、ススキの似合う水色の空。

さて、これからパンフレットを読むのが楽しみです。