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霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

猫・どんぐり・バリケン

幼少期、三世代で住んでいた家の最寄り駅で降りて、幼稚園の制服を着たまま散歩した公園を通り、その先の公園の日本庭園のなかの日本家屋へ向かう。通り道の川沿いの公園では、次から次へと猫が眼前に現れ(なぜか、顔の大きめな猫が多い)、それにいちいちあいさつをして、許可されれば写真に撮ったりしていたので、思っていたよりも公園に着くのが遅くなってしまった。

とはいえ、日がな一日どんよりと曇った空なので、庭園の輝かしい昼間の時間を逃した! という悔しさは味あわないですむ。そして、この公園にも猫がちらほら。しかし、通ってきた川べりの猫が、顔の大きさに比例してか態度が大きかったのに引き換え、この公園の猫たちは、可憐な子猫、中型猫姿の野良なせいか、写真を撮れる距離にまで寄ることさえ許してくれないのであった。

庭園の池のほとりにはまた、近寄ることは許してくれるが、全身から「こいつらウザー」というオーラを漂わせるヘンな鳥、バリケンさんもいらっしゃった。こちらは見るだけでびくぅと逃げ体勢に入る猫たちと違い写真撮り放題だが、そう何枚も撮って楽しいお方でもないのである。ところで、台風のせいかまだ青いどんぐりがへたや枝ごとだくさん落ちていたが、バリケンさんはあのようなものも食されるのであろうか。気になる。

そんなこんなで庭園を臨むお座敷で女子らしくまったり過ごし、馬場へ向かう人々と別れ、来たときと同じ道を戻る。そういえば、幼稚園のころ、買ってもらったおもちゃを胸と顔の前にかき抱いて、橋梁建設中のわきの鉄骨鉄板で出来た橋を渡っていたときも、こんな雨もよいの天気だった。

そのとき、わたしは父について歩いていたのだが、雨に濡れた鉄板の上で、どうしたはずみかつるりと滑り前に向かって転ぶと同時に、抱えていたおもちゃを投げ出してしまった。鉄板の上に投げ出されたおもちゃは、辛くも川への落下を免れたが、あれが冷や汗というものとわたしのファーストコンタクトだったと思う。

きっと、父は父で、おもちゃが川に落下した際、必ずや泣くであろうわたしへの対処法などで、冷や汗を感じていたにちがいない。