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『フィネガンズ・ウェイク』の読み方

宴席たけなわ前くらいに、恩師と英文学の話。恩師もわたしも習ったことのある先生が、『フィネガンズ・ウェイク』を訳したとのこと。

ジョイスというと、丸谷才一・ほかの『ユリシーズ〈1〉 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)』とか、柳瀬尚紀の『フィネガンズ・ウェイク 1 (河出文庫)』が有名だけど、内容よりも、「あのジョイス語を翻訳し通した」という偉業のほうが注目されがちなんじゃないかと思う。現に柳瀬尚紀がジョイスを訳出する過程などは、さまざまな著書となって結実しているし。

で、宮田恭子訳の『抄訳 フィネガンズ・ウェイク』はどうなのか、というのが昨日の話。これは抄訳と言いつつ、訳注が抄訳とは言えない、というか、むしろ訳注を詳細にするために抄訳にしたのではと思われるほどていねいに、キリスト教的・アイルランド的・ギリシャ神話的その他その他の意味で重層的に組み立てられたジョイス語の解剖を試みているのだとか。

だったら、物語は柳瀬尚紀版でざっと読んでおいて、宮田恭子版で細部を味わうという読み方もできるわけだ。いやあ、長生きはするものだなあ。