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霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

忘年会の罰ゲームの結果

たどり着いた、Bar酔拳、と書かれた、かつては住居専用であったろう雑居ビルの一室のドアを、おそるおそる開けるが早いか、3センチほどの隙間から「ダーーーーン、ジャジャン!」というあの音とともに、肉声で「あちょ、あちょぉォォオ!」という声が飛び出してきた。

好奇心は猫をも殺すんだっけ、と思いつつも、もう5センチほど開けたドアの隙間に同僚Nと上下に頭を連ねて中を除き見ると、客のいない店の壁をスクリーンがわりに、プロジェクタで投影されるブルース・リーに夢中で、ぼくたちの気配にまったく気付かないバーテンが、自己流でつくったに違いない筋肉質の上半身に蝶タイだけしてカウンターのなかにいる。

カウンターの上には等間隔にならぶウィスキーグラス。バーテンは流れる映画に関係なく、おもちゃとおぼしきヌンチャクで、そのウィスキーグラスの間の隙間を叩いては、カウンターから跳ね返るそれを脇に挟み、また次の隙間を叩く。

四つ目のグラスがカウンターから跳ね返るヌンチャクの鎖に触れ、カウンター上を転がってフロア側に落ちるのと、バーテンが「あちゃあ」と言うのと、同僚Nが「…あ」というのとは、同時だった。バーテンが、振り向いて言った。「押忍!」 …どういうバーなんだよ、ここは。少なくともモテとか出会いに無関係な店であることは、たしかだ。

忘年会の罰ゲームのルールとして、同僚Nとぼくとで、ともかくも一杯ずつは飲んで、証拠のレシートを作らなきゃならない。曖昧に頭をかしげて店内に入ると、ドアの脇にはジャッキー・チェン作品のビデオとDVDが詰まった棚が鎮座ましましていた。


※上記は、友人の発した「Bar酔拳」なる架空の店名に触発されてたちまち広がった妄想です。実在の団体、店舗、人物とは関係ございませんので、悪しからず。あ、でも似たようなお店があったら教えてください。中央線沿線あたりならありそう。