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霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

曾祖父と御前相撲

伝染(うつ)るんです。 (2) (小学館文庫)
母方の祖母・みっちゃんの父、つまりわたしの曾祖父・Aは、帝大教授のかたわら内裏勤め人でもあり、彼の直上の上司は明治天皇であった。

ある夏の日、納涼相撲大会が御前で催され、優勝したAに明治天皇が「なにが飲みたい?」と聞かれた。 暑いなか、激しい運動のあとなので、Aは「砂糖水を」と言った。まだアイソトニック飲料などない時代である。

すると明治天皇は「おい、Aは砂糖水がよいそうだぞ。かぶとむしのようなやつだな」と言ったという。つまるところ、御前相撲とはいえ、戦いに勝ったならば、男は酒だろう! というのが明治天皇のお好みだったのだ。まあそれだけなら、『お上ったらちょっといじわるね☆』ですむ話。

しかしこの話、意外に後を引き、半年経って年明けた年賀の席でも、乾杯の際、明治天皇は「おい、Aは砂糖水がよいそうだから」と、言われたのだそう。

明治天皇が、砂糖水→かぶとむし、という自分の思いつきを、単におもしろがっていつまでも言っていたのか、「おれの酒が飲めないのか」という稚気から言っていたのかは定かではない。しかし、時代の転換期を取り回すような人物は、これくらい執念深くないと務まらなかったのかもしれない。

でも、こんなのが自分の上司だったらたまらんなあ! だってかぶとむし呼ばわりですよ? 『伝染(うつ)るんです。 (2) (小学館文庫)』の斎藤さんですよ?