祖父とうどん粉湯
父方の祖父と同じく、母方の祖父も、戦争中は徴用されなかった。徴用の替わりに、専攻が生物学系、それも霊長類研究という関係から、大東亜共栄圏とか五族協和のため、理論的でっちあげをしろと指示されていた可能性も否定できない。
さてしかし、戦争が本土に迫ってくると、そのような研究をしろと言われても、とうてい本郷の研究室にこもっているわけにはいかない。というわけで、祖父もまた、疎開を経験したのだが、そこでの食事当番で、彼はやっちまったのである。
うどんを、水から茹でて、うどん粉湯にしてしまう、という大失敗を。
あとになれば笑って話せるネタだが、鍋のフタを開けたそのときは、鍋の中の白いお湯と同じく、頭が真っ白になったと思う。それにしても、そのうどん粉湯、どうしたんだろう。