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霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

『死にぞこないの青』@シアターN


スカイ・クロラ』の翌週に、押井監督の娘婿であるところの乙一原作の映画を見ていた。教師がかかわる小学生のいじめが描かれている映画ということで、見に行きたくなったのだ。


というのは、わたしは小学生の頃、いつも白衣を着てちょび髭な小男の担任に、ずいぶん酷い目に合わされていたからだ。この男は不動産広告に出てくるようなかわいらしくて明るい良い子が大好きで、自分のクラスのそのような生徒には「文集に載せるから」と言って写真を撮り、しかしその写真が文集に載ったことはなかった。また、ちょっと変わった生徒に関してはかなり安直に「知能が低いのではないか」とその子の親に子どもの知能の研究所への訪問と相談を勧めるような男であった。そのようにして研究所で調べられた子どもは「知能が遅れているどころか天才かも!」と騒がれたりしたのだが(ちなみにもちろんこれはわたしではない)。


また、私立のため風紀を守る目的で、生徒や生徒の親から教師への付け届けは厳しく禁止されていたにもかかわらず、面談の前になると必ず、「先生はとらやの羊羹が好きだってお母さんに言っておきなさい」と言う男でもあり、気に入らない生徒がミスをすると「○○さんは××なミスがクラス1多いので、黒メダルをあげましょう」と牛乳ビンの紙のふたの裏をマジックで黒く塗ったものに黒いリボンをつけ、教団の前に呼び出したその生徒の首にその黒メダルをかけ、「さあ、みなさん、拍手〜」というようないじめを日常茶飯に行う男でもあった。


なお、わたしはといえばいろいろあった中で、朝のHRの際に「声をかけられなくなったら見捨てられたと思えー」という話のあとの一時間目、自分の名前の由来を席順にこの男が指名して話していく、という授業で、思いっきり飛ばされたときのことが、いちばん記憶も鮮やかに刻み込まれている。その後、「修学旅行に引率したくない」という理由で退学勧告を受けたときのことは、「先生がいじめてるんだからいじめてもいいんだ」という空気に包まれた学校生活で、すでになにもかもどうでもよくなっていたせいか、あまり記憶はない。むしろその後、公立の学校に転校して開放された感を感じたくらいだ。


そういうわけで、わたしはこの映画の、担任によって、学校で寄る辺ない身にさせられていく主人公男子の身の上に、かなり感情移入して見ていたと思う。なので、ラストの大人な解決法には「もっと社会的にいろいろ剥奪してやればいいのに…」とか思ってしまったけれど、むしろこういう大人な解決法ができてしまう子どもだから、新任の担任の恐怖から目の敵にされてしまったのかもしれないな、とか思ったり。


見て楽しいというわけではないけれど、小学校にいる間に解決できなかった自分のいじめ問題の代理解決がされたような感じで、すこしだけ、気持ちが楽になった。とはいえ、それも映画の中ではいじめる側にもある理由が明かされることと、ひどくいじめられる主人公男子が、もういじめられなくなったということによるものかもしれないのだけど。


ちなみに、坂井真紀がとてもすてきになって出演していて驚いた。歯列矯正が手術レベルに成功した中嶋朋子かと思ったくらい。