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『STAND 立ち上がった性暴力サバイバーからのメッセージ』大藪順子 講演会@男女共同参画センター横浜

STAND―立ち上がる選択


大藪順子さん*1を知ったのは、『STAND―立ち上がる選択』という彼女の本からだった。この本には、本人が自宅で就寝中にレイプの被害に遭ってのちの公的なケアや裁判、そして長いトンネルを行くかのような精神状態の移り変わりと、数年後に自らの「撮る」仕事を通してプロジェクト「性犯罪サバイバー達の素顔」を立ち上げていく過程が描かれている。


この本を読んだとき、大藪さんが節目節目で聖書の言葉を求め、その言葉により立ち直り、立ち上がっていくことに、キリスト教の神にリアリティを感じられない身としては不思議な思いがした。しかし、教会の牧師とのカウンセリングのような会話から、逆療法のような提案を受け、ためらいながらも行動していくという強さを支えるのに、彼女にとっては慣れ親しんだ聖書の言葉が芯として最適だったのだろう。


今回の講演では、著書の内容が抜粋されるかたちで話されたのだが、レイプなどの性犯罪によって生活や人生が阻害されてしまった人にとって、そこから立ち直るのは本人の「選択」にほかならないのだ、ということと、そのような原因が自分のせいではない場合に、自分を責めないこと、そのことで立ち止まりすぎないことの重要性を感じた。これは、性犯罪ばかりではなく、自分のせいではない理不尽な「なにか」で生活や人生が阻害されてしまった人に当てはまることだなあ、と思いながら会場をあとにした。


なお、写真展「STAND 性犯罪サバイバー達の素顔」が会場の男女共同参画センター横浜*2の2階で11月19日(水)まで開催中。こちらの写真展も講演会の前に見たのだが、本の中の写真よりも、プリントされた写真からのほうがサバイバー達の表情から語りかけられるものが多かった。最終日の19日は12時までなので、興味ある方はお早めに。


今回の講演会と写真展のスケジュールは以下のとおり*3

講演会:2008年10月25日(土)
写真展:2008年10月25日(土)
会場:奈良女子大学


講演会:2008年11月4日(火)〜11月6日(木)
写真展:2008年11月4日(火)〜11月6日(木)
会場:北海道 酪農学園大学


講演会:2008年11月9日(日)
会場:広島県 福山東教会


講演会:2008年11月13日(木)
写真展:2008年11月10日(月)〜11月13日(木)
会場:岡山南方 きらめきプラザ


講演会:2008年11月15日(土)1:30pm〜3:45pm
写真展:2008年11月15日(土)〜11月19日(水)
会場:男女共同参画センター横浜


講演会:2008年11月23日(日)
会場:長崎銀屋町教会


講演会:2008年11月24日(月)
会場:長崎信徒大会 長崎ウエスレヤン大学


講演会:2008年11月26日(水)
写真展:2008年11月26日(水)
会場:岡山内山下 ルネスホール)


講演会:2008年11月27日(木)
写真展:2008年11月27日(木)
会場:津山市総合福祉会館


なお、プロジェクト「性犯罪サバイバー達の素顔」について、今回の講演会のプログラムの大藪さんによる紹介文を以下に転載しておきます。

STAND Faces of Rape & Sexual Abuse Survivors Project【性暴力サバイバー達の素顔】は、人生における究極的な試練に直面してきた女性、男性の内なる強さに光を照らします。被害者という立場に置かれながらも、多くは与えられた逆境を乗り切ろうと決意しています。

このプロジェクトに参加したサバイバー達の歩みを分かち合うことによって、被害者が未来に希望を見出す事ができるように、サバイバー達が罪悪感や恥じる心から開放されるように、また、加害者になる可能性のある人にとって次の被害者はその愛する人、娘、妻、姉妹や母かもしれないと気付いてくれるようにそして何よりも、人が安全に暮らす権利を誰も奪う権利はないことをこのプロジェクトを見て再確認してくださればと願っています。

このプロジェクトを始めた私も参加者達もかわいそうと思って欲しいのではありません。この問題に対する意識があってもなかなか口に出して提起できない、そんな人達、社会が性犯罪についての理解を深め会話を始めるきっかけとなってくれれば、と願っています。