上野水香の『ボレロ』@ゆうぽうとホール
磁石と砂鉄、ブラックホールと隕石、卵子と精子。上野水香の『ボレロ』は、そんなものを思い浮かべるステージでした。抽象的な思考ができるほどだけの余裕があったということです。
神と人を分かつものは完璧かそうでないか、なのかと、良くも悪くも「人間」なボレロの上野水香のボレロを見て考えていました。ポーズだけとっても左右対称になりきれないところとか、一時的に神を降ろすことはできても、自身が神になることはできないところとか。いわばギエムはアポロンであり、かつ天照大神でもある太陽神で、上野水香は天宇受賣命といったところでしょうか。
人間である上野水香の『ボレロ』は生々しく人間らしいエロティシズムあふれていました。ギエムの『ボレロ』はエロティシズムが漲るのとおなじくらい、タナトスにもあふれていて、その瑞々しさと禍々しさの混沌が、わたしを打ちのめすのです。