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『ヒマラヤに学校を建てよう!―建築家のボランティア奮闘記』

ヒマラヤに学校を建てよう!―建築家のボランティア奮闘記

ヒマラヤに学校を建てよう!―建築家のボランティア奮闘記

貧困地域の問題を教育で解決しようとせっかく校舎を建てても、教材費や先生のお給料が捻出できないような現地の状況では、学校運営が続かず校舎が朽ち果てるだけ、という例がずいぶんある。


しかし、この本では校舎を建てるだけではなく、現地ののんびりしたチベット系ネパール人との「労働」に関する意識の擦り合わせから、奨学金の設立、先生のお給料の手配、そして机や椅子、生徒達への古着をうんざりするようなネパールのお役所仕事を突破しての輸入など、とにかく奔走しまくるメンバーの様子が記録されている。貧困地域の支援をするなら、ここまでやらなければ自己満足で終わってしまう、ということを突きつけられる部分である。


とはいえ、厳しい気分ばかりにさせられる本というわけではない。泥臭く現地の人たちと関わる関西出身のスタッフたちのうまくいかなさは、見方を変えれば人情喜劇でもあるし、現地の建築作法をできる限り導入して建てられた校舎や、子どもたちがお小遣いを出し合って家畜が校内に侵入しないよう建てた門などのエピソードにはじんわりとこみ上げて来るものがある。


ちなみに、このプロジェクトは本書発行後も継続しています。
詳細はこちらのウェブサイトへ>http://aaf.cool.ne.jp/


なお、本書に不満を挙げるとすれば一点。あまりにも報告書チックな部分に少し違和感が…。資料は資料、本文は本文で別立てになっているほうが好みではあります。