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霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

束芋 断面の世代@横浜美術館

会期中最後の週末でぎりぎりに。まず会場の横浜美術館に入ったとたん、入場前に薄暗いロビー正面の吹き抜けに吊るされた2〜3階分の高さのスクリーンに、団地がCTスキャンにかけられたかのように輪切りにされ、家具や小物類などの部屋のなかのものが輪切りの断面から落下していく縦長のアニメーションが映写されています。これは団地とアニメが好きなわたしは前菜が一種類かと思っていたら三種盛りだった、みたいな満足感。


入場してすぐの作品は、新聞の連載小説に付けていた挿し絵や、その小説にインスパイアされて生まれたアニメーション、その他数篇の動画作品がいつものように大きく映し出されます。日常見慣れているものが過剰に、あるいは異形に変化している最中のモチーフだらけの大量の挿し絵を見て、この作家にとって脳内のイメージを存分に表現する手段は、絵画よりアニメなんだろうな、と思ったり(そんなわけでDVDのついていない図録は買う気にはならずに帰ってきたのですが)。


というわけでおもしろかったです。といっても束芋作品は自分の中ではチェコアニメとかに隣接したカテゴリで、サブカルなアニメーション作家としておもしろいんであって、メインカルチャーとしての芸術としてではないですが。おおざっぱに言えばメインカルチャー=体制側、サブカルチャーカウンターカルチャーに見るように反体制寄り、と思っているので、いわゆる一般的な普通人の生活に伴う日常イメージを、どろりとした憎しみにも似た違和感で異形化させるこの作家がメインカルチャーの人とは思えないのです。