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『FRAGILE』川本真琴

新しいアルバムはまだ届きません。この週末かな? それで『gobbledygook』にも収録されているこのシングルを出してきて聴いています。



『FRAGILE』って言ったら、それはわたしにとってはずっとYESの『こわれもの』だったのだけど、川本真琴のこれを10年前に聞いてからはまずこちらが頭に浮かぶようになってしまいました。


作曲は岡村ちゃんが変名でしているとのことなのですが、YESをリスペクトしているのか曲調も曲「長」(11分弱!)もプログレ的です。が、そこに載るまこっちゃんの歌詞はYESの壮大な世界とは対照的に、吹けば飛んでいってしまいそうな不安に震える「ぼく」あるいは「ぼくたち」の世界。それはまるで、風に吹き飛ばされて舞ってる枯草が一瞬、太陽に照らされて輝いているのを埃の舞う暑い路上で見てしまったかのような一瞬一瞬。そんなごくごくミニマムな心情と瞬間を、よくこんなに掬い取れたものだ、と思うと同時に、不安や悩みを避けられない突風のように感じている時のことを強烈に思い起こさせられます。ちなみに鎮静作用のある10分超のJ-POPの曲というと1993年の『天使たちのシーン』がありますが、あの肯定的で、ゆっくりと高揚感を醸成する曲とは対照的、まるでネガのような歌詞世界です。


というと、じゃあ不安な気持ちをかきたてられて終わるのか? と思われるかもしれませんが、この曲を聴くと歌われている「ぼく」が不安や悩みを少し肩代わりしてくれたかのような不思議な鎮静作用のあるのが、繰り返しこのシングルを聴いてしまう理由。それは駱駝の背の最後の一藁くらいかもしれないけれど、なにかを取り除いてくれる気がするのです。