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『ベジャール、そしてバレエは続く』@下高井戸シネマ

ル・シネマで見そびれた仇を下高井戸で。この日からモーニング・ショーなので勇んで早起きして上映30分前に行ったらまだ映画館のシャッター閉まってた。10分前くらいに行っても中央通路脇の席につけるくらい空いてたので勇み足過ぎ*1


ベジャール死後のベジャール・バレエ団を担うジル・ロマンに迫る映画*2ですが、ベジャールがほとんど現れないのにベジャールの横溢する映画でした。ベジャールの死後、2008年からまずは3年間の期限付きで補助金を支出するローザンヌ市とベジャール・バレエ団との関係や、ローザンヌ市民によるベジャールの思い出、クロード・ベッシーなどのパリ・オペラ座バレエ団の運営側によるジル・ロマンへの期待など、ベジャール・バレエ団を取り巻く状況から始まり、ベジャール・バレエ団のダンサーたち、そしてジル・ロマンへと、真綿で外堀を埋めるかのように進んでいくドキュメンタリー。



途中でベジャールによるジル・ロマンについての熱くて重い強烈なラブレターが流れて、強烈さのあまりに「もうエンディング?」と思ってしまったほど。でも、ジル・ロマンの苦悩が描かれるのはむしろここから。ローザンヌ市長がリハを見に来る前日に男性ソリストが頚椎あたりを傷めたり、衣装のラインが一人分だけダサく上がってきてしまったり、開演日2日前なのに舞台装置が想定と違ったりに加え、ジル・ロマンへのインタビューからは、同業の天才に愛されあとを託されることの素晴らしさ、そしてそれと同じくらいのものすごい重圧が漂います。


ベジャールの「振り返ってはいけない、何が起ころうとも進みつづけることだ」との言葉も強烈。これ、ジル・ロマンにしたら、ベジャールがユーリディスとして現れても振り払って進め、って本人からあらかじめ念を押されてるってことですよね…。ちょっと「仏に会っては仏を殺し」とかを思い出してしまう言葉です。もちろんジル・ロマンの苦悩が浮き出るようにメリハリつけて演出してはいるのだろうし、舞台装置の不備なんかも実際はジル・ロマン一人だけで対応しているわけではないんだろうけど。


演出といえば、ローザンヌ市民によるベジャールの思い出で、主に映されているのがタクシーの運転手、それも黒人の、というのはベジャール・バレエ団が社会階層と人種のここまで膾炙している、という演出なのかなー、とか、いろんなダンサーの踊る姿やインタビューがあるけど、ただ一人の日本人団員・那須野圭右さん*3は踊るところだけじゃなくインタビューも欲しかったなー、とか。


でももう一回くらい見たいかも。下高井戸シネマは火曜日が1000円の日のようなので、このまま暖かいようなら早起きして見てから仕事に行こうかなとか思っています。

*1:ちなみに下高井戸シネマでは26日まで朝9時半から、4月24日〜30日まで夕方4時50分からかかります。

*2:http://www.cetera.co.jp/bbl/

*3:http://www.chacott-jp.com/magazine/interview-report/interview/int0805b.html