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チベットの歴史と文化学習会@文京区民センター

とびとびにしか参加できていないのですが、第9回の今日は「『農奴解放』言説」の歴史研究、80年代のチベットの映像、チベット漫談のあとに、青海省地震と支援(政府の公的なものからNGOなど私的なものなど)の現在についての報告など。最終的に90人強の方が参加されていたのではないでしょうか。ちなみに会の正式名は「チベットの歴史と文化学習会第9回ジェグド復興支援学習会」。


農奴解放」言説に関しての講義は1950年代の中国共産党側のポスターや資料を書誌学的に読み解きつつ、そもそも中国語の「農奴」に当たる言葉はもともとチベット語にあったのか? というところまで丁寧に丁寧に追いつめていく大川謙作先生*1の指す一手一手から、それらがいつ、どのように捏造されたのかが浮かび上がる、とてもわくわくする講義でした。


80年代のチベットの映像はBBCによるプロパガンダ映像であることを念頭において見てください、とのお話もありましたが、お若いときのダライ・ラマ法王さまやチベット訪問団の人々に殺到するチベットの人たちの映像は、いつ見ても思想も生活もなにも制限されずに生活している身としてはすこし心苦しくなります。


その後、休憩を挟んで小野田俊蔵先生*2とテンジン・ドゥンドゥップさんによるチベット三河漫才のようなチベット漫談といろんな楽器の紹介と演奏。ドゥンドゥップさんは日本に来て3年半とは思えないほど日本語が達者で、小野田先生とのお話は掛け合い漫才そのものでした。「その衣装のなかには(芸に必要な)なにが入ってるの?」と先生が聞くと、出てきたのは、
・ミネラルウォーターのペットボトル(夏で喉が渇くから)
・財布
・携帯
で、その次に漫談中にも使った木のお椀が出てくるという具合。



さて、ドゥンドゥップさんは奥様が日本人とのことで、初めて日本に来たときはまず日本でヒマラヤでは嗅いだことのない匂いにびっくりしたそうですが、それはお魚の匂いだったそうです。


ところが奥様のご実家の稼業はお魚屋さん! テーブルいっぱいに並んだ歓迎のご馳走ももちろんお魚が多く、魚介類の角(たぶん海老とかのヒゲのことかと)や尻尾がついたお刺身の大皿にびっくり、さらにお酒をかけるとまだ生きているかのように跳ねるナマの魚肉に「…これはとても食べられない」と青くなったドゥンドゥップさんだそうですが、今は週に一回はお寿司を食べるくらい大好きとのこと。


そのドゥンドゥップさんが今度はチベットで奥様のご披露をしにラサに戻ったとき、なぜか高山病になってしまい、地元の方に「それは魚食べてるからだろうなぁ」と言われて納得したとか… なぜ納得(苦笑)標高の低いところの食べ物だからですか?


さて、その際に今度はあとで脳みそを食べるために(フランス料理でも羊や牛の脳を食べますが、おいしいですよね)お祝いのテーブルにヤクの頭が置いてあるのを見て、奥様が「絶対あれは食べられない…」となったそうで。


ドンドゥップさんは漫談師だからというより明石家さんまのようにまずしゃべりたくてたまらない方のようで、先生に「今日はあんまり時間ないから!」と何度か言われていて残念そうでした。


その後はジェグド地震のその後のお話。まず地震から10日後の映像を見ましたが、道路から見渡す限り倒壊家屋という状態でした。さいきん一週間から十日前に行ってきた人の話では、
・更地だらけでどこに何があったかわからない状態
・全壊していない建物に負傷者や病人が収容されている
・若いボランティアが体だけでなく心のケアもがんばっている
・四川の地震で学んだことを活かしているようで現地では感謝はしている
・いちばん大変なのは中学までの義務教育の学齢を過ぎた子どもで、親が亡くなったり家が壊れたりして学費が続かない、今後の不安な状態
・ボランティアで入った人が政府によって帰されたというニュースがあったが、これは神戸の地震の際などに気持ちだけが先走って結果、現地であまりできることがなかった人がいたような状況がジェグドでもあり、そのような人々が帰されたようだ
とのことでした。


また、当初被災者は医療費は無料とのことでしたが、それも最初の一ヶ月で終わってしまってみんな保険適用などもなく自費で高い治療を受けるしかないとのこと。これはチベット人に限らず、中国での医療は今どこでも誰でもそのような状況とのこと。


そのような場所にどうしたら支援を届けられるのか手探り状態のようですが、必ず届けてくださると信じて今日も少額ですが、金額じゃなく継続が大事なんだ! と自分に言い聞かせつつ寄付をしてきました。

*1:https://jglobal.jst.go.jp/public/20090422/200901037049711580

*2:長い髪を編んでいらした先生ですが、今春、勤務先の大学付属幼稚園の園長になった際に「違和感が…」との大学側の求めに応じて髪を切られてました>http://www.bukkyo-u.ac.jp/mmc01/onoda/