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『ドン・キホーテ』@ゆうぽうと

東京バレエ団とダニール・シムキンの「ドン・キホーテ」。バレエ・フェスでシムキンに度肝を抜かれて、2階の1列目ほぼ中央をゲットして楽しみにしていたのですが、シムキンは期待を裏切らない凄さでした。あとテープだと思ってたら東フィルの生オケだったのはちょっとうれしい(けどフォルテはちょっと繊細さと情緒に欠けたかな)。


今までドン・キはキトリとバジルのテクニック対決なイメージだったのですが、今回はシムキンのバジルが突出しすぎ。そこだけ重力の働き方違いませんか? とか、ペアとして考えると端正というか小奇麗にまとまっているというか堅実に踊っている小出領子のキトリのキレがやや落ちるなとか(とはいえ、誰とは言いませんが小さくまとまらないけど破綻してるステージを見ることの多い、今日踊っているはずの方よりはずっと良いだろうなとは思います)。ドン・キって闘牛士並べた前でのソロとか例の32回転とかでのキトリのキレの良さを見に行くのが楽しみだったりしたのですが、まったく違うドン・キを見せられてクラクラして帰ってきました。


シムキンのバジルはとにかく元気良くて子犬みたいで、綺麗な諸星あたる、という感じ。けどそこでラムとあたるの鬼ごっこじゃなく、しのぶとあたるの追いかけっこ、に見えてしまうのはバジルとキトリの技量が拮抗してないから。そういう意味ではステージとしてバランス悪かったのは残念。まあ、シムキンと互角のダンサーとなるとやはり誰か呼んでくるしかないのかな。ちなみのこの日のステージ上でシムキンと同じくらい目を惹いたのは、ジプシーの女を踊った吉岡美佳さんでした。空気が一気に濃厚になり、吉岡さんからなにかの重力磁場が発生しているかのような素晴らしい踊りでした。


それにしても、シムキンが踊ると冷静になれば振り付けどおりなんですが、しなやかすぎ、やわらかすぎ、高すぎ、鋭すぎなどで、一瞬違う振り付けのようにさえ見えたりして、「えっ? 今なにやりました?」と驚かされること多数回。あのほっそく見える腕で軽やかに片腕リフトとか、あの高さで跳んで着地音ほぼなしとか、ジャンプも高いし回転のキレも凄いのに太ももがぱつんぱつんなわけでも重心が低いわけでもない(身長は高くはないけど、とにかく細く見える!)。いったいどうなっているのか、天才であり驚異のダンサーです。


2008年のヌレエフ・バレエフェスでのシムキンのバジル(昨日見たのより片腕リフトがちょっと辛そう)


ちなみにやはり大乗り気で一緒に見に行った家族いわく、
「今までなんであんな振り付けなんだろうって納得できなかったところが、シムキンだとすごい説得力!」
「堪能した。もう今死んでもいい」
「コンテンポラリーはやらないのかな〜。次はいつ日本で公演するのかな〜(今死んだら見られませんが・苦笑)」
「外部記憶装置とかでデジタル化して記録できない部分が蒸発して行ってるの〜(感動で口や目、耳とかの開口部からなにかが漏れ出てるようだよ、というわたしに対し)」。


たいへん満足したようです。どっとはらい