読んだり食べたり書き付けたり

霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

宮崎駿が選んだ50冊の直筆推薦文展@世田谷文学館

f:id:Mmc:20120722145216j:image

 

かつて児童文学専攻だった身として、どんな貴重な資料があるのかとどきどきしながら二階の展示室に行ってきました。チケット売り場では、4000人分限定の豆本をいただきました。昨日からの企画展なので、まだあるみたいです。入手したい方はお早めに。

 

f:id:Mmc:20120722180150j:image

 

展示室に入って際立つのは、石井桃子さんの児童文学を普及させようとする渦巻くような熱意。会場入ってすぐには、岩波少年文庫の前身となった単行本や初期のものが展示されています。これらは、石井桃子さんのお持ちだったものを、今は中野区の東京子ども図書館が所蔵しているもの。 これは、中のページがちょっと見えるように展示してあるのですが、入っている朱や鉛筆の書き込みに心打たれました。第5版のためにはもはや第4版は本ではなく単なる材料とでもいうような厳しさをそこに感じ、『クマのプーさん』を版が新しくなるごとに手を入れ続けていて、編集者に迷惑がられた、とかいう逸話を思い出させられます。

 

ほかにも石井桃子さんがエリナー・ファージョンの作品を訳すにあたって、ファージョンの係累に出した手紙の青焼きコピーらしきもの、『ゲド戦記』を翻訳された清水真砂子さんが、翻訳途中にアースシー世界の特有の言葉などを訳すにあたって、アーシュラ・K・ル=グウィンに問い合わせたお返事の現物、神宮輝夫さんに「早く『ツバメ号とアマゾン号』シリーズの続きを出してください」と懇願する少年からのお手紙など、貴重な資料がたくさん。 実際に本を読めるスペースもあり、帰りに一階ロビーで気になった作品を買って帰ることもできます。夏休みに入った日曜の午後なのに、おとなが数人しか展示室にいないのがもったいない内容でした。

 

f:id:Mmc:20120722154333j:image

 

なお、文学館併設の福祉喫茶どんぐりでは、実際に撮影に使われていたゴジラの着ぐるみや、下高井戸シネマで最近まで使われていた35ミリフィルム映写機が展示してあり、また今会期中は、映画『千と千尋の神隠し』の冒頭で千尋が抱えている花をイメージしたお菓子のケーキセットがあります。お菓子はアイシングがされた、素朴な柑橘系のウィークエンドケーキでした。