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霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

第13回世界バレエフェスAプロ第2部感想

(1)「扉は必ず...」 オレリー・デュポン/マニュエル・ルグリ
振付:イリ・キリアン、音楽:ダーク・ハウブリッヒ(クープランの「プレリュード」に基づく)

えっと、これわたし、第3部(1)の「ロミオとジュリエット」だと取り違えて見始めたので、「なんつー倦怠感あふれるロミジュリ! 新解釈にもほどがある!」と思って見てました。ごめんなさい(家族は順当に「どこの国でもバカ夫婦はバカ夫婦なんだなあと思って見てた」とのこと)。なのでその思い込みに基づいた感想です。

送られた花束を「いまさら…」と持て余すジュリエット(なんでそうなった…。ってここで気付けよって感じですが:汗)、二人の間の淀んだ空気感を表すように、水中バレエのようにスローモーションで踊り始める二人。男は内側から鍵のかかった扉を開けようとし、女は阻止する。その過程でベッドに倒れ込んでも睦み合うことはなく、四肢を空中に突き出して、同じポーズで硬直する二人。

そのうち女がキレて花束を男に投げつけたあたりで空気が変わる。とうとうドアの鍵を開けて外に出る男、追う女。また室内に戻ってきてしまう男。それをドアの外から貞子張りに姿を現したり隠れたりしながら見ている女(ここはドリフとかも思い出してしまい怖くもおかしかった!)。最後には前のいさかいの時にでも放り投げたままになっていたらしい椅子をそれぞれが部屋の隅から持って来て、登場時から若干、薄まったとはいえ倦怠感をまとわせたまま、椅子に座り、幕。

もうとにかく、二人の関係の出口なしな閉塞感、倦怠感がものすごかった。音楽はアジア系の楽器からチェンバロ(この音があったので「新解釈だけどやっぱりロミジュリなんじゃ?」とか最後まで思ってました。バカすぎる…)、レコードのスクラッチ音といろんなものが使われていて、特に女がドアの外から貞子張りに姿を現したり隠れたりするような繰り返し場面でのスクラッチ音は効いていました。

(2)「海賊」 ポリーナ・セミオノワ/イーゴリ・ゼレンスキー
振付:マリウス・プティパ、音楽:リッカルド・ドリゴ

すごくお上手。文句は何もないのですが、うーん、パッションがあまり伝わって来なかった。ポリーナ、好きなのになあ。

(3)「セレナータ」ナターリヤ・オシポワ/イワン・ワシーリエフ
振付:マウロ・ビゴンゼッティ/音楽:アメリゴ・シエルヴォ

こちらは打って変わってパッションパッションパッション! 気の強い女と俺様色男のいきなりおっぱいひっぱたいたり、かみつくように抑え込んだりなど、力づくでの激しく互角の恋愛勝負。惚れた方が負け、とかいうかわいらしい勝負ではもはやない。骨太でラテン的というか、日本人にはなかなかなさそうな(特に女性。男性は万国共通でいるだろうけど)、湿気からほど遠い関係性をスカッと見せつけられました。

(4)「瀕死の白鳥」ウリヤーナ・ロパートキナ
振付:ミハイル・フォーキン、音楽:カミーユ・サン=サーンス
チェロ:遠藤真理、ハープ:田中資子

すべてが素晴らしかった! それ以上なにも言えないくらい美しい。メジャー中のメジャー作品ですが、今回のAプロのなかでも最後まで記憶に残りそう。会場の拍手も地響きのようでした。