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霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

英国ロイヤル・バレエ団の『アリス』

ロイヤルのバレエ版アリス、見どころありすぎ、麗しすぎで目が潤みます。衣装も一点一点目の前でギロギロ見たいものばかり! その中でも、原作ではもっさりした印象のいも虫が、あんなにゴージャスでエキゾチックかつエロティックになっているのが特に素敵。何度でも見たい舞台でした。ブルーレイもそのうち買うかも。

希望を言えば、うさぎ穴に落ちるシーンでティーカップやケーキや乳母車と一緒に舞う文字や数字に、ドジソン先生リスペクトで数学記号も入れてくれたらうれしかったな。そういえば、アリスのおうちで思わせぶりに一カ所だけカーテン上がってるとこにドジソン先生が覗いてないか、ついチェックしてしまったけど、そういうことはなかった。幽霊が出る物件は賃料が上がるお国柄だから、そういうのちょっと期待してしまいます。

とはいえ、この舞台でのコントラストのついた演技や衣装での感動は、子どものころに世界を見た感動に近いものがあった。子どものころの思い出が鮮やかなのは、その頃は脳内にまだ参照項目が出来上がっていない、國分×中沢本で言うなら「喩」の構造が出来上がっていないからだろうけれども、その頃のプリミティブな感動を思い起こさせてしまう今回の公演は、本当にすごいと思う。

この公演のためにマリメッコで新調したリボンタイとチーフをギャルソンのピンクのチェックのシャツに合わせ、マッドハッターを意識したと思われる家族は、舞台の完成度が高すぎて脳が刺激されまくった結果、わたしが先日、國分×中沢本で感じた読後感のような、「文明が進歩していく速度に、人間の中身がついていってない、but、その文明を進歩させているのも人間であるという矛盾」を感じていたようです。