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霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

『ムード・インディゴ うたかたの日々』@目黒シネマ

前半の裕福で幸せ、華麗な生活の描写が驚くほど原作の空気を彷彿とさせて素敵なだけに、後半がせつない。前半からちょこちょこ描写されるコランの不器用ぶりが、後半の人生のうまくいかなさに拍車をかける。

しかしこれ、起こっている出来事の時間軸を、若い間の短い期間から、人生の80年に引き伸ばしてみたら、ものすごくリアルなんじゃないだろうか。これは自分が中年と言われる年齢になっても、どうも年経た実感がないからそう思うのかもしれないし、4大卒でいったん就職はしたけれどまた大学院に戻って、30過ぎまで社会人になってなかった経験からかもしれないけれども。

ラスト、ねずみが小説どおりでなくてよかった。原作のラストは原作でいいけれど、映像で見せられると親近感の度合いが違うから、元のままだとつらいなー、と途中から思ってたのです。でも、彼が最後に持ち出したものが、あの幸せな生活のかけらなことが、またよけいにさみしい。傑作でした!