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霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

『江戸川乱歩の陰獣』@神保町シアター

キャストも贅沢なら脚本もカメラもよく、和服も山の上ホテルや横浜グランドホテルも眼福の、黒蜥蜴の習作のような、原作より乱歩っぽいくらいの一本。

探偵の推理作家役に若くて可愛い柴犬みたいなあおい輝彦。わたしの好みではないけれど、ああ、これはそうとうな人気だったろうなあと納得。

対する黒蜥蜴役はリカちゃん人形のモデルでもある、まさにお人形のように美しい香山美子。彼女の和服姿はいちいち素敵なんですが、半襟がずーっと同じものだったような? 富豪夫人ならそここそ替えると思うのだけど、短期間撮影で長襦袢を着っぱなしだったのかしら。

そしてあおい輝彦の担当編集さん役の若山富三郎がまたおちゃめで素敵です。彼がワトソン役でもあるんだけど、映画の初めの方で、原稿のできてないあおい輝彦山の上ホテルに缶詰めにするために連れて行くところから、いい。

ほかに仲谷昇野際陽子加賀まりこ、尾藤イサオ、菅井きん倍賞美津子が脇役として贅沢に使われてます。

最終的には、表現者、創作者同士の対決する黒蜥蜴といった趣。それだけに、愛した相手が自分が猛烈に嫉妬した作品群を書いていた作家の中身だと知ったときのあおい輝彦の雨に濡れた柴犬っぷりが哀れ。