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霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

『エヴェレスト 神々の山嶺』@立川シネマシティ

エベレスト 3D』が客観的な映画なら、こちらは主観的な映画。怖いのは山ではなく、山に執着する山ヤの業なのがよくわかるホラー映画であり、絵面的・熱さ的に登山BLでもあり。

そもそもBL展開向けの材料が多すぎ。深町が声もなく泣きながら羽生の写真を焼くシーンは、ユーミンの『あの日に帰りたい』の「なきながら〜 ちぎったしゃしんを〜」あたりを思わせるし。

深町を普通の人から羽生みたいな人非人的な性格にキャラ変更したことで、自分と同じものを感じて、一目会っただけの彼に惹かれていく展開だし、羽生のルートをたどるにしても、羽生と同じ単独無酸素の必要はないのになぞっちゃうし。

「一緒に帰るぞ」に至っては、山の怪談でポピュラーな、登山中に死んだ仲間を埋めて下山するのに、夜中に無意識で起き出して掘り返して連れ帰るを繰り返す例のあれを思わせるし。

深町が羽生に「呼ばれ」てメモを見つける前後は、思わず原田知世の『時かけ』かと。

…かまち、ふかまち、深町
(からの)
ありったけの心で想え!

深町くん!
強く念じるんだ!
土曜日の! 実験室!

的な。まあ、高所登山は脳の酸素も少なくなるので、幻覚幻聴はあるにせよ、やはり思ってもいないことは見えないし聞こえないんじゃないかなあ。


あと、映画的演出なのか、その標高でそれはないよね、とか台詞多すぎ、とか、合成が相変わらず日本映画っぽくしょぼい、などあって、なんというか、原作とマンガとは別物でした。ただ、深町がファーストシーンから羽生に相通じる人非人さを持っている人物として原作から改変されたのは、山ヤは頭がおかしいってことを知らしめるのには有効だと思います(褒めてます)。

ただ、やはり羽生やほかの登場人物のモデルが思い出されてフラストレーションたまるので、ノンフィクション登山ものをまた読もうと思わされました。