いろいろなネタバレがネットを開くと飛び込んできてしまうというのに、なかなか見に行けなかった『ブレードランナー2049』をようやく。3Dである、ということより音の良さを求めてのIMAX 3Dシアター視聴です。見てきた友人のほとんどが闘ったという尿意とは、なるべく水分をとらないようにして、のどの渇きはのど飴で癒し、上映直前にトイレに行くことで回避! でも、座り続けたことによるお尻の痛みは回避できませんでした。
10/27(金)公開『ブレードランナー 2049』IMAX®特別映像
そして、ネタバレなしの第一の感想は、これ。
「犠牲者が出る事は考えなかったのか。人間の事じゃねえ。魂を吹き込まれた人形がどうなるかは考えなかったのか!」by バトーさん
重篤な押井信者の夫の人は、「はっ! もしかして押井監督は13年前の時点でこれを予測して!」とか世迷言言ってましたが。さてここからネタバレ含む感想へ……。
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とにもかくにも人間の、人間による、人間性の劣化がひどい。前作で描かれた時代から人間性の劣化が進行している。「人間性」という言葉は「人間性を疑う」などのように、「善さ」の面で使われることが多いが、本作の世界のレプリカントにとって人間性とは、残酷さの代名詞になっていそうだな、と思うほど。
前作『ブレードランナー』では、レプリカントを追うのは人間なのかレプリカントなのかは、一部の人間のみ知る、という状況であるようだった。それはおそらく、人間と同じかたちをしていて、同じように動いたり喋ったりする生き物への、人間としてのモラルや矜持があったのだろう。
しかし今作では、レプリカントを追うのはレプリカントである、ということを誰もが知っている。また、タイレル社にかわってレプリカントを製造している会社の社長曰くの、「人間に奴隷労働をさせるわけにはいかない」という思想の延長線上だろう、正社員と派遣社員、自国民と移民を思わせるように、人間とレプリカントの関係もぎすぎすしている。
今作では加齢し、老人ホームにいるとある人間が、前作では人間性の善きところを見せていたのに対し、今作ではとにかく人間性の残酷な面が突きつけられる。
そしてもちろん、設計そして運用上、感情=こころが標準装備され、「人間よりも人間らしく」振る舞うように作られているレプリカントのほうにも、そうした人間性の残酷さは存分に影を落としている。地位のあるレプリカント・ラヴは自分を管理する上司に「処分されること」への恐怖から、昇進して得たその地位を保つのに汲々としてかなりなストレスを抱えているように見える。
そしてまた、その上司であるレプリカント製造会社の社長・ウォレスは、一見、キリストのようにも見えるが、その狂った感じがどんどん顕わになるにつれ、
・麻原彰晃こと松本智津夫
・アニメ映画『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』の人形遣い
・『イノセンス GHOST IN THE SHELL 2』のキム
・ニュータイプの時代に固執するガンダムのシャア
などの禍々しき人物たちに重なって見える。社長さんのララァはララァよりミハルに似てたけど。てか、シャッチョサン、それ、電脳化ですよね? と思ったり。
ほかにも、ウォレスのような野心を持っているのではなく、レプリカントをより人間らしく働かせるために、「よかれと思って」人間らしい記憶を書き込むという設計の残酷さへの、人間側の無自覚にゾッとする。レプリカント向けの偽の記憶を作る技術者のことばの、無邪気な善意の残酷さ! それとは別の人物が、レイチェルとデッカードの仲さえもレプリカント自己複製化計画のプログラムだったのでは、とわざわざデッカードに言う残酷さ! 思わず『攻殻機動隊』で清掃車のおじさんが、別れた妻との間に娘がいる、という偽の記憶を書き込まれ、それが偽である、と告げられたあとの絶望を思い出す。心に響くところの少なかった実写の『ゴースト・イン・ザ・シェル』でも、このシーンはさすがに胸が痛んだものだ。
仏教的には、有情、つまり痛いとかツラいとか、感情の動きがあるように見えるものは「一寸の虫にも五分の魂」、というわけで、かならず魂があるとされる。また、「草木も眠る丑三つ時」の言葉のある日本は存外、アニミズムが根強い国でもあり、わたしにそうした人間以外の生き物を含めた世界の見方が染み付いているせいなのか、感情が標準装備されたレプリカントへの人間の仕打ちが堪えた。堪えまくった2時間43分だった。
今後、もしレプリカントが地球を制圧したら、人間から生まれた人間にレプリカントの感情を上書きし、悪しき「人間性」を抑えこもうとしてもおかしくない。それはロボトミー手術と同じことだけれど、レプリカントが「善意で」それを行ってしまいそうなほど、本作の人間の「人間性」は禍々しかったのである。
そして、レプリカントやジョイを「人間のなかの弱者」としてみれば、これはまさにわたしたちの住む現実世界で起こっている話でもあるのだ。
☆そのほかのこと☆
・デッカードのホテル入り口のハングル、なんて意味なんだろう? ご存知の方、教えてください。
・ハリソン・フォードの肉体にシーナマコトっぽいものを感じる。サワノ文字で肩から頭にかけて「ナロー、やるのか、コノヤロー」と書いたオーラが漂っている感じ、といえばおわかりいただけるでしょうか?
・予告やビジュアル展開でよく見た巨大ホログラム女子が男子を指さしてるシーン
あるセリフに打ちのめされるうえ、女子の目が……! 実写版『ゴースト・イン・ザ・シェル』の芸者ロボットみたいで怖いです……。
・途中まで警察の女上司が、実は彼女自身が追っているものだったりしないのか、とドキドキしてました。
Adam Savage Behind the Scenes of Ghost in the Shell!