教会暦と文字校正
文字校正には、隣り合う整数を列挙する際は「、」でつなぎ、間に一つ以上の整数を挟んで示す場合は「~」でつなぐ、というルールがある。「2、3日の間に」は「2~3日の間に」とは書かないし、「12~15時間で」を「12、15時間で」とは書かない、というものである。
それにともないこの時期は
「24~25日のクリスマスを前に」
を
「24、25日のクリスマスを前に」
とする直しが発生しがちなのだが、わたしは毎年のようにこれについてもやもやする。たしかに文字校正のルール上はこの直しは正しい。しかし、クリスマスをキリスト教の暦に基づいて考えるなら、どうか。
クリスマスを祝うキリスト教は、ユダヤ教の一分派として発生した。そのため教会暦もユダヤ教のそれに倣い、教会暦では日没を一日の境目とし、12月24日の日没から25日の日没までを一日と考える。
つまり、「クリスマスイヴ」というのは、一般に日本で把握されているような「クリスマス=12月25日」の前の晩、を指さない。「クリスマスイヴ」の「イヴ」には「前夜」という意味はなく、単に英語の「イヴニング=夜」の略であり、「12月24日の日没から25日の日没までの一日」のうち、夜の部分、つまり「12月24日の日没から25日の夜明けまで」となる。
すると、キリスト教的には「24~25日のクリスマスを前に」は正しい、ということになってしまうのである。文字校正の仕事はわたしにとって、こういう細かな雑念との限りない闘いの連続なのだ。
で、そんなことばっかり頭の中でこねくり回していると、ヤクとチベット仏教のお坊さんにはさまれた、このサンタ帽姿のチベタン・ガール人形に、「そんな瑣末なことにこだわってるアナタはほんとにおバカさん」と言われている気になるんである。