オレリー・デュポンの「ボレロ」@Bunkamuraオーチャードホール
緊張のほかに重圧を感じるオーレリ・デュポンの「ボレロ」だった。ギエムが「最後」という封印を何度も破って、東日本大震災後や一昨年の大晦日までボレロを踊り続けてきた日本でボレロを踊る、という重圧は、こちらが勝手に想像していただけではないと思う。
ただ、ギエムのボレロがジョルジュ・ドンのそれとはまったく違ったように、デュポンのボレロもギエムのボレロとは全然違った。ギエムのボレロが性別を超越したものだったということを、デュポンの女性が踊っている、としか言いようのないボレロで気づかされたし、そもそもベジャールにとってのボレロは男性の踊りだったのだな、とも気づかされた。
むりやりに民俗学的な見方をすれば、こんな感じ。
・ジョルジュ・ドンのボレロ
すぐれた男性(群舞)の中でも特にすぐれた男性であるドンが、すぐれた男性を神がふたたび遣わす円環のために神に捧げられる
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・シルヴィ・ギエムのボレロ
女性であり男性でもあり、かつそのどちらでもない在り方で、ボレロの記号性を高めていたと思う。なので、様々な見方ができる。たとえば
a)神が宿る女性の依り代を、男性が供儀で分け合うことを通して神に捧げる
b)生命を司る母なる存在が男性性を煽り、卵子に精子を導く
などなど
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・オーレリ・デュポンのボレロ
ギエムのa)と異なり、女性本人が神をおろし、男性を煽る女性性をいかんなく発揮。なにしろ最初の手の動きから、女性的だった。パリ・オペラ座でのさよなら公演が「マノン」だったことを思い出す。そういう意味では踊りはじめこそ重圧が感じられたがデュポンそのもののボレロであって、踊りが進むにつれて、群舞とがっちりはまる瞬間が増えていったように思う
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