読んだり食べたり書き付けたり

霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

年末年始映画

年末最後に見た映画は『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』、年始最初に見た映画は『ダンシング・ベートーヴェン』でした。

 

KUBO/クボ 二本の弦の秘密


『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』本予告  11月18日(土)新宿バルト9ほか全国ロードショー

 

「日本人こそが大感動できる大傑作」と書いてあるレビューを見てしまって、やや気持ちが萎えたのですが、やはり見に行ってよかったです。

「日本人こそが」とか言われると、「いや、日本人にもいろいろいますから」と言いたくなってしまうのですよね。たとえばアメリカ出身で日本文学研究者のドナルド・キーン氏と、それほど古典や漢文の素養のない一般の日本人とを比べれば、この映画をより理解するのはどちらか明白なはず。あ、キーン氏は日本国籍取得してるから日本人っていうのはなしね。

本作は日本人かどうか、ということはもちろん関係なく、ストップモーションアニメとCGの融合による「傑作にする!」という執念深さとテクニックの融合に、まずは誰もが刮目させられるはず。

 


かぐや姫の物語 予告

 

また、永遠なる月の世界と、有限である地球上の世界が対比される点では、高畑勲の『かぐや姫の物語』が連想されます。『かぐや姫』では月世界の永遠性は絶対ですが、『KUBO』ではどうも怪しい。本当に永遠なら、なぜ後継者を必要とするのか? とか、追手が仮面をかぶっているのはなぜか? 仮面をかぶって本心を殺さないと戦えないからなのではないか? それは自身の世界の永遠性を体現できていないからでは? などなど、いろいろと月世界の永遠性に疑問がわくのです。もっとも観客にそう思わせることで、有限である地球上の生命の輝きを引き立たせているのだとは思いますが。

 

gaga.ne.jp

ただ、主人公の名前が「クボ」というのは面食らいました。日本人にとっては「クボ」というのは日本人のファーストネームではなく、ファミリーネーム「久保」として知られていますから。主人公たちの「敵」が「帝」であり、かつては「帝」や朝廷を表し、その後、それより身分が低い将軍を示すことになった「公方」という身分から取ったのか? とネーミングにかなりの引っ掛かりが……。

 

 

『ダンシング・ベートーヴェン


踊る「第九」、ひとつになれ人類よ!映画『ダンシング・ベートーヴェン』予告編

 

ベートーヴェンが好きなら、あるいは「第九」が好きなら、バレエに興味がなくても感じるものがある作品だと思います。わたしは、一つの舞台が出来上がるまでには、良くも悪くもこんなにもいろんなことがあるのだと、あらためて震撼しました。

振り付けたベジャール亡きあとでもこれが公演できたのは、当時、日本舞台芸術振興会(NBS)/東京バレエ団代表の佐々木忠次氏が存命だったからだろうと思うと、今後、日本でこの作品を舞台で見ることはできないのではないかと、この映画で描かれる日本で2014年に行われた公演に、チケットの高額さと、当初踊るはずだった好きなダンサーが交代したことで、迷って迷って結局見に行かなかったことをものすごく後悔しました。せめてブルーレイかDVDを出してほしいなあ。

 

www.youtube.com

www.synca.jp

そして、なるほど、オーケストラと合唱団はバレエが踊られる舞台の後ろだったのね! という発見も。バレエもオケも合唱も大所帯で、どういう構成だったのかも気になっていたのです。あと、娘さん、お父さんにそっくりすぎ。ホムンクルスかと思ったよ。