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霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

花見風呂

桜の季節に温泉に行った。宿に着く前に遅くまで食べ続けた夕食で、おなかがはち切れそうだったので、露天風呂のついた共同浴場に入ったのは、深夜零時を回っていたかもしれない。

午前三時半まで開いてるというお風呂も、脱衣所で使われている籠は一つだけ。わたしは洗面台でのんびりメイク落としをしていた。

と、鏡越しに手ぬぐい的なサイズの布で前を隠して風呂場から出てきた若い女性に声を掛けられた。

 

「あ、あの!」

 

真剣な顔である。もしや幽霊か、あるいは露天風呂にありがちな、なんらかの虫や爬虫類でも出たのか? と振り向いた。

 

「あの、すみません、これから入られますか?」

 

これは、虫か爬虫類だな、と思いながら返事をしたところ、思いがけないことを言われた。

 

「あのっ、露天風呂の月と桜が綺麗なんで、写真撮ってもいいですか? 今、入ってるのわたしだけなんで」

 

あ、なるほどね。メイク落としは洗い流すタイプだったので、まだ時間がかかるから、焦らなくて大丈夫、と言うと、彼女は脱衣籠からスマホらしきものを取り出して露天風呂に戻って行ったようだった。

わたしがメイクを落として、浴衣を脱ぎ始めたころにお風呂から上がってきた彼女に、いい絵は撮れましたか? と聞いてみた。

 

「うーん、思ったように撮れないっていうか……。肉眼が一番でした!」

 

その後、わたしも露天風呂に入ってみた。うん、たしかに月と桜が綺麗。というわけで誰も来ないのをいいことに、わたしも彼女に倣ってスマホを撮りに脱衣所に戻り、写真を撮ってみた。

 

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スマホのカメラでは肉眼で見ているのより、月がずっと小さく写るのはなぜなんだろう。

ちなみに露天風呂の桜は、朝の誰もいない時のほうが、だんぜん綺麗でした。

 

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今週のお題「お花見」