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モラルか仕事か ~あるいは如何にしてわたしの転職回数は激増したか~

いわゆるバブル崩壊後の就職氷河期世代のわたしには、仕事生活上の転機は回数が多すぎる。だが、正社員時代にしろ派遣社員時代にしろ、思い返すとモラルの点で耐えられない、ということが転機というか、転職の契機になっていることが多い。

四大卒で最初に就職した会社は男尊女卑にセクハラ、モラハラがひどかった。それは新入社員歓迎会で、上司のおっさんとチークダンスを踊らなければいけないという奇習から始まった。これは教育係のジェントルな上司が盾になってずっと踊ってくれたのでなんとか助かったが、気味の悪いことだと思った。ただ、会社で働くというのが初めてなので「社会というのはこういうものなのか?」と様子見していたのと、社長のきょうだいの紹介で採用されたっぽいという負い目で耐えていた。

だが、贈答品の果物が休憩室にあれば、「女なんだから剥いて出すくらいしなさいよ」と言われ、剥いたら剥いたで「ヘタだなー。こんなんじゃ結婚できないぞ」などと言われ、(なんでこんなこと言われないといけないんだろう?)と、だんだんマイナスのポイントカードがたまっていった。

自分がセクハラ・パワハラに遭うのは言葉の上だけだったので、それだけならもしかしたら神経が鈍磨していったかもしれない。だが、わたしのいた部署の不振ぶりに危機感を覚えた社長が、中途入社や他支部から「デキる社員」を二人、異動させてからセクハラ、パワハラ、そしてなににも増して「いじめ」というモラハラが噴き上がることになった。

「デキる社員」が異動してくる、ということで、すでに在籍している社員の一部が、自分たちは「デキない社員」認定されたとでも思ったのか、異動してきた女性社員二人へのいじめが始まったのである。健康食品*1を食べていれば「ネズミ講でもやってるんじゃない?」と陰口、時間はかかったが大口の仕事をまとめたことについて「仕事をとってくればいいってもんじゃないんですからね!」と謎の攻撃*2、階段で両手が資料でふさがっているのをすれ違いざまに胸を掴む*3、定期券が支給されて事務机に置いてあるのをいじめている相手のもののみ指ではじいて「これ、誰のですかねえ?」「知らねえや、こんなヤツ」と談笑する……。

もっといろいろあったが、こうしたいじめはわたしの見ていないところで行われたので、これらはすべて、いじめを受けた二人があとから話してくれたことだ。だが、話半分にしたってひどいことばかりだ。でも当時のわたしはそれを聞いて同情したり、一緒に憤慨することしかできなかった。もちろんコンプライアンス部門なんてない会社であった。

そして、このいじめを盛んに行っていたうちのひとりの、いわゆるお局様は、なにか自分の中でバランスをとろうとでもいうのか、仕事帰りにわたしを軽食に誘うことが増えた。話題は仕事上でのあれこれを教えてくれる有意義なものではあり、そこで社内いじめの話が浮上したことはなかった。わたしはいじめには加わらず、しかしいじめをしている人たちを諌めることもなく、かといってコネ伝いにこれらをチクリもしなかったので、もしかしたら彼女はわたしからなにか聞きだそうしていたのかもしれない。

だが、わたしはわたしでそのうち、他部署と連携する仕事で、おかしいと思うことをおかしいと先輩に指摘したため、その部署の人たちにイヤミを言われるようになっていた。そんなこんなで、就職三年目の終わりに、次も決まっていないのに衝動的に辞めてしまった。もはや耐えられなかったのだ。当時はその「耐えられないこと」が非難される風潮だったが、それに耐えて人間性が腐ったり劣化したり鈍磨するよりは、あのとき辞めてよかったと、時間が経てば経つほど思う。

なお、その会社を辞めてすぐに、いじめを盛んに行っていたうちのひとりの男性上司が業務上横領をしていたことが発覚した。他支部に出向していたジェントルな上司が本部に帰任して、つじつまの合わないところを調べたことで判明したのだ。モラルがおかしい人たちがたくさんいるところでは、不正も起きやすいのかもしれない。そういうところで染まらないうちに脱出してよかったと思うのだ。

その後もモラハラパワハラに晒されることは数多くあったが、「これはおかしい」と思うとさっさと逃げ出すことをためらわなくなった。また、そういうおかしい会社は、会社の規模の大小に限らず存在することもわかった。◯まじろうで知られる会社では上司に「血液型が気に入らない」と言われ更新せず*4、入ったときは7人だったが試用期間が終わるまでに上司兼社長・先輩・自分の3人になってしまった広告会社の社長兼上司の理不尽すぎるパワハラ(とそれにすっかり慣れてしまっている先輩)からは一年経たずに逃げ出し*5、ゼネコンの経営企画部時代は隣の部署の女子にトイレで「よく耐えられますね」と同情されるほど意味不明なことで怒り出すパワハラ上司が異動してきて半年くらいで辞め*6徳育用の教材を作るのに参考資料のデジタル万引きを推奨されたベンチャー企業では全体的なモラルの欠如に呆れて更新せず*7、気に入らないことがあると空のペットボトルを投げるヒステリック上司の異動による独立行政法人からの逃走*8などがそれだ*9

もちろん辞める際に「上司が気にくわないくらいで辞めてたらどこでもやっていけない」的なことも人事部や派遣会社、人材紹介会社の人には言われてはきた*10。だがちょっと待ってほしい、上記の件は周囲も明確に「おかしい」と認識していたことばかりなのだ。周囲は自分が当事者じゃないか、わたしがスケープゴートになっているので当事者にならないですんでいただけだ。そんなところで耐える必要が、果たしてあるだろうか? 少なくともわたしにとってはない。むしろみんな耐えずにどんどん辞めて転職すればいいのに、と思っていたし、今もわりとそう思っている。

さて、「上司が気にくわないくらいで」辞めまくって、やっていけなくて路頭に迷ったかといえばそれはNOで、三か月以上仕事が空いたことはなかった。今は小学生の頃からのうすらぼんやりした夢だった「一日中、なにかを読む仕事」に就いている。今のところ、辞める予定はない。

 

 

 

*1:単なる梅醤番茶である。

*2:時間がかかったことで特にほかのメンバーに迷惑がかかったとかいうことはまったくなかったのだが。

*3:セクハラというよりもはや暴力である。

*4:教育系サイトを作る部署の人間がこんな非科学的なことでいいのかと呆れた。なお派遣会社の人には謝り倒されたが、コイツはその後も別の人間をいじめていた模様。

*5:先輩のオーダーで資料を宅配便で先方に返送したら「なんで宅配便で返送したんだ!」と頭ごなしに怒鳴られた。いや、あんたのかわいがってる先輩のオーダーですが、と丁寧口調で言ったら不機嫌そうに黙り込むなど。対外的には1~3時間は付き合わせる取材先に取材協力費は出さないのですか? と聞いたら「いらねえよ、広告してやってんだ」と言われたり、取材先からの文言修正依頼に応じないなど。

*6:打ち合わせで来た他部署のランチ仲間(もちろん意味不明パワハラの愚痴を共有している)も意味不明なことで怒る上司を目の当たりにしてもはや笑いそうになっていたほど。

*7:ここでもそういえばちょっとトロい社員がパワハラというかいじめを受けてたなー。

*8:彼女が異動してきて半年、6人の部署で7人が辞めた。

*9:順不同。てかこれモラハラパワハラ上司に遭いすぎな人生じゃね?

*10:履歴書の経歴欄が長すぎて転職の足切りをされたことも、まあけっこうある。