日フィル×コバケン×キュッヒル@杉並公会堂
日本フィル杉並公会堂シリーズ2018-19【第1回】で、チャイコフスキー二曲、アンコールでバッハ一曲、グリーグ一曲。ほぼライナー・キュッヒルさん目当てです。
一曲めのチャイコヴァイオリン協奏曲ニ短調op.35のヴァイオリンソロでキュッヒルさん、弾けまくる。もともと音が上振れする癖がある(そしてそれが聴くひとに異様な高揚感と若さを感じさせる)のが、「やりすぎ、もうそれダブルシャープついてるのでは」っていうのが何回も。それでも破綻しないのはなぜなんだろう。
破綻しないどころかキュッヒルさんが弾き始めると、その圧倒的な美でこちらはナイフ投げ芸人の助手のように、あるいは標本箱の中の虫のように、ホールの椅子に音の一つ一つで留められて身動きできなくなり、そこに天才より奇才寄りだったのが、ウィーンフィルのコンマスを定年で退任してさらに進化して鬼才になったキュッヒルさんの繰り出す音の、暴力的なまでに圧倒的な美の波涛が叩きつける。ソロ部分が終わると美への感動と安堵で涙が出る、その繰り返し。名演奏でよくあることだけれど、よく知っているはずだった曲が、「この曲ってこういう曲だったのか!」とリニューアルされる現場に立ち会うことになる。
過去には椅子に留められたまま平衡感覚がなくなって、ジェットコースターのように二階客席から吊り下げられているような状況に陥ったこともある。耳が平衡感覚と直結していることを、思わぬところで思い知った。
それにしても、ウィーンフィル時代も圧倒的だったのが、今日はそれに加えてかなりやりすぎ感ある前衛一歩手前の演奏で、キュッヒルさんとオケをまとめるコバケンはとてもとても大変そう。日フィルという生花のなかに、キュッヒルさんという水晶で作られた花を活けるがごとし。キュッヒルさんの出番はこの曲のみなので、アンコールにバッハ無伴奏ヴァイオリンソナタ第一章。
休憩をはさんでチャイコ交響曲第4番へ短調op.36。バレエ曲でも繰り返されるチャイコの手癖がよくわかる曲と演奏。一曲めで過度に集中しすぎたのか、日フィルやや集中力とスタミナに欠ける展開。とくに客席でアルミホイルからおにぎりを出しているような音や着信音がしてからの、後半の木管ピアニッシモによるフレーズ出だしの音の揃わなさは残念。まあでも一曲めで鬼に置いてかれないように必死に演奏してたから、しかたないのかもしれない。
なお会場では着席前に熱烈なキュッヒルさんファンの夫の人はCDと書籍を購入。わたしより繊細な耳をしている夫の人は、キュッヒルさんの演奏によるメジャー曲のリニューアルを「世界がそこで誕生する現場」と表現する。ちょっと仏教哲学的である。
ちなみに書籍はちょっとしか準備されていなかったみたいで、帰りにはもうありませんでした。どちらも出ていたのを知らなかったので、買えてラッキー!
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