箱根食事旅行・その1
一泊二日で箱根に行ってきた。翌日のランチが目的だったので、初日は登山電車とケーブルカーに乗って紫陽花を見られたらいいかなー、くらいのゆるい旅程。箱根湯本までのロマンスカーでは、小田急線のホームのお弁当売り場で買ったお弁当でブランチ。
箱根湯本で乗り放題切符を買う。折悪しくケーブルカーの先のロープウェイの大涌谷〜姥子〜桃源台駅間が定期点検で運休で、その区間は小田急バスの代行運転とのこと。それもバスは30分待ち、かつ紫陽花の時期もあって道は渋滞とのことで、登山電車とケーブルカーのみを往復乗車することにする。
われわれは乗り物に乗ること自体が目的なのだが、切符売り場窓口の女性には「ケーブルカー頂上駅には見晴台以外になにもありませんよ?」と何度も念を押される。大丈夫です、乗り物に乗りたいだけなので……、とは言わなかったけど、「ぎゅうぎゅう詰めの登山電車とケーブルカーに乗って行ったのに、なにもなかった!」とクレームつける人がいるんだろうか?
そんなわけで登山電車に乗り、彫刻の森美術館を通り過ぎたら、夫の人が「行きたい」と。これまで箱根に何度もバイクで来てるのに、行ってなかったんかい! しかし、上りの登山電車が終点の強羅に着いた時点で午後四時前。ケーブルカーに乗って戻ってきたら、時間切れだから、乗らないで彫刻の森美術館に行くか? と言うと、ケーブルカーには乗ろうと言う。
ケーブルカーに乗って、終点のケーブル駆動機構を見て、夫の人、ご満悦。わたしは駅のはずれの小屋が気になっていたのですが、どうやらこれは駅員さんのトイレらしかった。
ちなみにわたしは山が好きなので、たしかにケーブルカー頂上駅には「見晴台以外になにもありません」でしたが、鳥が鳴いたり飛んだり止まったりするのや、雲山肌をまだらに影にしているのを見ているだけで十分。
それからまたケーブルカーで戻ってきたら、美術館のたぐいはのきなみ閉館時間直前だったので、散歩してトマソン建築を見つけたりしつつ、下りの登山電車で帰ってきたのであった。
ちなみにケーブルカーと登山電車の乗り継ぎ駅の強羅は夕方五時前なのに駅前でも閉まっている飲食店(しもたやという意味ではなく)が多かった。美術館の軒並み夕方五時閉館と併せて、外国人観光客の「日本は観光地でも施設やお店が閉まるのが早い!」という文句はこういうところから出るのかも、と思う。
箱根に限らずだけれど、現行だといまだに五時や六時の欧米人には早い時間に夕食という旅館は多いけど、もし七時や八時まで美術館が開いていて登山電車とケーブルカーも九時まで動いていれば、健脚な観光客なんかはもう一箇所くらい美術館を見に行ったりしないだろうかとも思う。個人的には夜の庭園を見てみたい。
それでもって、美術館のカフェでも夜の軽食とビールとかの軽アルコールなんかも出すようにして、開館時間の長くなる分、そこでちゃんとワークシェアして雇用を増やせば定住人口も増やせるんではなかろうか。
とかいうことを考えつつ、登山電車で陽の傾くなか紫陽花やスイッチバックを堪能して箱根湯本に戻り、宿に向かう。
前回、伊豆の温泉に入りに行った際に泊まったホテルは、外資系というか米系資本で、食事がいまいちだった。そのことを夫の人は根に持っており、次に食事付きで温泉にとまるときは地場資本の宿じゃないとだめ! と噴き上がっていた。とくにデザートが激甘すぎてぜんぶ同じ味なのが許せないらしかった(わたしも色合いに惹かれて取ったライムケーキとやらを一口食べたら甘すぎて残したほど)。
今回は日本旅館だけどかなり巨大でシステマチックそうなので、ちょっとそのあたり心配したけど、杞憂だった。ビュッフェだけどお寿司、天ぷら、お椀サイズのラーメン、豚しゃぶなどは目の前で作ってくれるシステムで、パフォーマンスだけじゃなく、ちゃんとおいしい。デザートも甘すぎず、ちゃんとひとつひとつ味の違う洋菓子だけでなく、自分でタレをつけるみたらし団子もあった。
箱根は旅館もホテルも林立しているから、企業努力がないと生き残れないのだろう。実際、廃業したとおぼしき形跡をいくつか目にした。伊豆の米系資本ホテルは、一山ぜんぶホテルの敷地なのがウリではあるけど、そのために周囲に同業者がいないせいであのようなことになっているのかもしれない。……でも同じ系列の都心のホテルのメインダイニングのメニューも米系っぽい大雑把さではあったなあ。
そして食べ過ぎで胃がもたれたのか、源泉かけ流しで熱めの家族風呂に入ったのに、夜中過ぎまで寝付かれず、丑三つ時に露天風呂もある大浴場に行ってみた。お風呂の中で水がマッサージ機のように噴き出ている内湯とか、屋外だけど屋根の付いてる露天風呂とか、とにかく湯船がたくさんあって広い。さすが、大規模旅館ならでは。