スイカジュースの思い出
三日に一回はプロントの塩スイカジュースを飲んでいる。ところでスイカジュースというと、今でも友だちと語り草になるできごとがある。
中学の吹奏楽部で一緒になり、今もつきあいのあるショーコちゃんという友だちがいる。中学か高校のとき、彼女が夏休み中にうちに遊びにきたときのこと、うちの母がスイカをざく切りにし、それをガーゼで搾って出したスイカジュースに、彼女はいたく感激したようだった。
そのころ、彼女のうちでは高性能なジューサーミキサーを買ったところだった。「あれを使えばガーゼで搾らなくてもスイカジュース作るの一発じゃね?」と思ったショーコちゃんは、帰宅して彼女のご母堂にスイカジュースをリクエストした。「じゃあ、明日の朝にね」とご母堂は答えた。
翌朝。ショーコちゃんの前に置かれたのは、雨の後の信濃川河口付近の水面のような、なんともいえない灰色がかった緑色っぽい液体だった。
「おかーさん、これ、なに?」
「え? あんたが飲みたいって言ってたスイカジュースじゃない」
ご母堂は、高性能ジューサーミキサーで、西瓜を皮ごとジュースにしてしまったのである。ちなみにその味は……、
「微妙に甘いところがまたなんともいえない不味さだった」
そうである。