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「文豪・泉鏡花×球体関節人形」展@弥生美術館

素晴らしすぎて展示替え後に二回、見に行ってしまった弥生美術館の「文豪・泉鏡花×球体関節人形」展。幻想的な作品や幽霊譚だけでなく、花柳界に材を採った「日本橋」のちょっと百合っぽい一場面もあり、ときめきまくりました。明日の23日までなので、明日お時間と興味ある方はぜひ!

鏡花の幻想的な作品や幽霊譚って、あらすじ(会場にもあります)だけ読むと話がどう繋がっているのかわかりにくいんですが、美文で強引に読ませてしまうんですよね。その実際はツッコミどころな隙間があるところが、人形作家さんたちにとっては腕を奮うに最適なのかもしれません。

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さて、後期展示最初の作品は「註文帳」。剃刀を持った、ガーゼ製と思しき白い経帷子の幽霊が迎えてくれます。ばっちり目が合うのが怖い、けど、美しい幽霊です。裸足の指先は舞踊家の動きを留めたかのような美しさ。

代表作のひとつ、「天守物語」は、二人の作家さんが競作しています。ひとつは原作では殿様の生首を持つところ、鏡花の生首を持つ富姫。もうひとつは揃いの着物を着て、でも刺繍入りの半襟はそれぞれ違う女童三人(なぜか図録に収録されていない!)を従えた水色の髪に水色の瞳の富姫。こちらは水色の服に水色の濃淡の重ね半襟、裾から覗く長襦袢はやはり水色の鱗模様、着物は純白の鱗模様に金の帯を締め、着物とお揃いの帯締め、その上から黒地に紅色と銀色で松竹梅の刺繍が前面に入った打掛姿。

一階最後の作品は「革鞄の怪」の花嫁。可愛らしすぎて、汽車で行き合った電信技師が心乱されるのも仕方ないと納得してしまう可憐さ。

二階はやはり代表作の「高野聖」の魔性の女。図録の表紙の写真だとこちらを見ているように写っているのですが、実物は目が合いそうな位置を行ったり来たりしても、なぜか目が合わない。目が合ったら、こちらも馬や蟇にされてしまうのでは、と思うほどの魔性を感じます。

なお、この「高野聖」手前の「夜叉ヶ池」の主・白雪姫は、目がLEDになって動きがあるのが化け物感を増幅していて、面白い試みだなと思いました。

ひとつだけ不満を言うとすれば、和装や和髪は後ろからも見たいので、壁側に鏡を置いてくれたら……、と思う作品がかなりあったこと。図録にそのへんが掲載されているとうれしいのですが、やはり全部は難しいわけで。

そこはいずれこの人形たちのオーナーになる方のもの、ということなのかもしれませんね。

 

お題「今日の出来事」