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ちょっとだけ参加の「地平線会議40年祭」

日にちが決まった時点で、その翌日からの休暇が決まっていたので、さすがにその前日にも休みを申請することができず、「……行けない(涙)」となった地平線会議40年祭ですが、がんばって早起きして第一部だけ聴いて出社。

なお、 地平線会議というのはさいきん流行りのTV番組「クレイジージャーニー」みたいなことを、1979年から月に一回報告者を読んで話を聞く、ということで続けている、世界を舞台に活動している行動者たちのネットワークです。探検部や山岳部出身者多め。

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そもそもふだんのわたしの午前中は睡眠時間! でも糞土師の伊沢正名さんと関野吉晴さんの話だけでも聞いてから出勤したい! との思いで20〜30分遅れで着けるかなあ、くらいで家を出て、見込み通り遅れて着く。関野さんが進行役という贅沢な時間。けど関野さんも言ってたけど、一人二時間は要るスピーカーを2、30分ずつって、時間足りなすぎ! ほんとなら服部文祥さん+坪井伸吾さんトークまで居られるはずが、関野吉晴さん+伊沢正名さん+樫田秀樹さんのトークのみ聴いて出社。


会場に入ったら樫田さんのボルネオの先住民のお話の最中で、つぎつぎ映し出される先住民の全身のすごい筋肉に圧倒される。見せるためではなく、使い込んだ筋肉。あえていえば徳弘正也さん作品で見たことのある筋肉。

彼らは夜中でも昼間と同じように森を歩き、吹き矢で獲物を仕留めるという。猿を捕る際に、小猿が生き残ったらそれは殺さずずっと大切に育てる、というのはちょっとアイヌイオマンテっぽいなあと思ったり。サゴ椰子から採るデンプンでつくる葛湯が彼らの主食とのこと。そして、そのような森からいただく、という生活について彼ら曰く、「熱帯雨林はあなたの国でいえば銀行のようなもの、われわれは利子だけもらって生活してる」と。

だが、そのようなボルネオの先住民がなぜ順番に行うサスティナブルな焼畑農法をやめたのか、コメを収穫する籠に年単位で蜘蛛の巣が張っているのはなぜかを聞く前に時間切れで次の方に。残念無念。

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また、樫田さんと関野さんとの話の中で、上記のような社会の「ありがとう」「ごめんなさい」の言葉のないわかちあい文化について触れられたのが興味深かった。 感謝してないわけじゃないけど、ありがとうの言葉がない、悪いと思っていないわけじゃないけど、ごめんなさいもない、言うと「そんなこと言うな」と言われる。これは、持てるものはものも知識も技術もすべて分かち合うのが当然の社会だから。

関野さんが「森の中で収穫があると、チンパンジーなんかはそこで独り占めして食べてしまうけど、人間は持って帰る。チンパンジーは『20人もいる集落に持って帰って分けるなんて、バカだなあ』と思ってると思いますよ。でも、平等にわけたグループが生き残ったのではと思うんです。学者の方は『でもエビデンスがないでしょう』と言う。でもね、人間社会で生き残っているのは結局、平等に分ける指向性を持っているグループ、国じゃないですか? それがエビデンスです」という言葉にはうなってしまった。
 
続いて糞土師の伊沢さんへの関野さんからの「ヴィーガンのひとたちの、植物は意識も痛みもないって考え、どう思いますか?」という鋭い切り込みからの展開も、もっと詳細に聞きたかった。読めば、って話もあるかと思うけど、関野吉晴さんとの会話で聴く醍醐味ってものがあるわけで。

伊沢さん曰く、「植物は生き物じゃないって思ってる人がいるけど、植物だけじゃなく、菌類や微生物だってわれわれと同じ生き物です」「われわれは植物が光合成した結果の、うんこであるところの酸素を吸って生きてるんです」「人間を基準に考えてるからわからない」。まさに。中学の理科で光合成を知ったときのような新鮮な衝撃!

関野さんさらに追撃、「伊沢さんは野ぐそしないときってあるんですか?」。伊沢さん曰く、「2000年に入ってからでは14回です!(18回だったかも?)こういうところに呼ばれますと、どうしてもね」。カウントしてるし、即答できるくらい記憶してるんだ……。悔しさのあまりか? と思っていたら関野さん、「こういうところに呼ばれたときに、トイレでしたのをビニール袋に入れて野に埋めるっていうのはダメなんですか?」。伊沢さん「ダメじゃないけど、面白くないからやりません」。そうですよね、面白いか、面白くないかですよね!

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また、関野さん自身の、医師として検便しようとしたら、「お前はここではウィッチドクター=ホワイトマジシャン=ブラックマジシャンだから、出したばかりでまだ自分の身体の延長にある便は呪いをかけられそうで怖くて託せない」と、言われた話も漆原教授感あって面白くも素晴らしかった。いや、ウィッチじゃないドクターですよ〜、と思いつつ、会場で笑ってしまった。

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なお武蔵野美術大では関野さんの展示が週明け15日(月)からあります。明日から11月10日までの一か月弱。グレートジャーニーに使った丸木舟縄文号も展示されるとのこと。本人によるギャラリートークや、「カレーライスを一からつくる」「プージェー」などの映画上映とトークの会も。

関野さんがどうやら今年度で武蔵美をやめるらしく、集大成っぽい展示になるようです。商店街にもこれまで50年撮ってきた写真を引き伸ばして展示する計画もあるらしい(本人談でサイトにないので確認するまでなんともいえませんが)。

関野吉晴ワンダースペース | 美術館

 

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