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実写版『人狼』を映画館で見たい!

日本では10月19日からNetflixで配信開始された実写版『人狼』を見ました。以下、まずはなるべくネタバレなしの感想を。

 

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原作の風景を執拗なまでに実写化する情熱と、2029年というすぐそこの近未来SF映画としての換骨奪胎がうまく両立していて、ストーリーの改変箇所も無理はありません。

押井守作品の実写化だったら、トレスした豪華なファン・ムービーみたいだった『ゴースト・イン・ザ・シェル』や、本人による劣化コピーのようだった『ガルム・ウォーズ』じゃなくて、こういうものが見たかったんだよ!と満たされた気分に。

冒頭、「え、そこはそのままでいいの?」と思ったり、ラストは「甘口じゃない?」と思いつつも、それもいいかなと思えるほどの完成度の高さ。原作にはない三人目の「赤ずきん」には、ちょっとドキッとしたりもしました。戦闘するプロテクトギアもしっかりたっぷり見られたし、たぶん吹き替えで、少なくとももう一回は見ます。というか、映画館の大きいスクリーンで見たい!

あと、期待していなかったのですが、腐女子にとってはなんといってもBL妄想が捗ります。男社会の軍事もの、警察ものとかスパイものではありがちといえばありがちなんだけど、髪形や衣装がまたそれを引き立てていて、たいへん素晴らしい。徹頭徹尾わかりやすかった敵役は、ミッチーがやったら似合いそう、なんて思いながら見てました。原作でもミッチーにやってほしい感じではあるんですけどね。

 

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ところでこのネトフリ版『人狼』、見終わると原作もすぐ見たくなってしまうのが、真夜中視聴者には困り者。見終えて二時間弱は頭が睡眠モードにならなくて、朝刊が配達された音を聞きつつ寝ました。これなら原作を続けて見てもよかったんじゃ、いやそしたら見終わってからまた二時間眠れなくなるからダメか……。

映画に限らず名作やカルト的な人気の作品がリメイクされると原作のすごさや粗さが改めてわかるものだけど、今回は前者が大きかったと思います。というのも、アニメ版『人狼』の手描きでのあのナチュラルな動きはやっぱりすごかったんだな、と思い出し鳥肌したから。

実写版はかなり原作に忠実な見た目で作られているのですが(たぶんものすごく押井守ラブな人たちなんだろうな〜)、それによって生きた人間がした動作を撮影すればなんてことない動き、現物としての装甲や銃器の重量感を、手描きで起こしてかつナチュラルに表現していたアニメ版のすごさが逆照射されてくるのです。あらためて原作のアニメ版『人狼』への、当時の才能あるアニメーターの集結具合に感嘆するばかり。

さて、次の動画のあとはネタバレとBL妄想全開になります。読みたくない人は引き返してくださいね。

 

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もう一度、書いておきます。これ以降ネタバレとBL妄想垂れ流しなので、そういうのが苦手な方はここでページを閉じましょう。いいですね?

 

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いやあこの実写版『人狼』、もうね、BL的にヤバいです。

わかりやすい敵役が追い詰められたときの言葉、「俺とお前の何が違うっていうんだぁあああ!」は、原作にもあるセリフですが、ここでは上官のもとに残れなかった敵役の彼からの、上官のもとに残っている主人公への怨嗟に聞こえるのです。原作とは違って、上官がまたいい男なんですよね。その上官のもとに残れているお前が憎い、とも聞こえてきてしまうのがBL脳。『装甲騎兵ボトムズ』でロッチナがキリコに向けて言うせりふ、「わたしがッ、異能者であったならッ!」を思い出すエモさ。

 

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そしてそして、彼女が処刑されるのを止めに来た主人公を上官が諭し、「せめて心残りがないようにおまえが処刑しろ」と二人きりにし、かつ主人公が処刑できなかったときのためにスナイパーをスタンバイさせていたのにもかかわらず撤収させ、上官が自らプロテクトギアを身に着けて始末をつけに赴くシーン。全体的に、「なんでこの女なんだ! 戻ってこい! さもなくば俺を倒していけ!」感がすごいんですよ。うあー、ヤバいヤバいヤバいBL脳汁があふれるわー、と思いながら見てました。

しかも最後の最後で上官、始末がつけられずに主人公を逃がしていたことが判明。そう考えると、主人公と彼女を隠し撮りした写真を、上官が火に焚べるシーンも、BL的に意味深!

そんなわけで、BL関係だけで妄想すれば、主人公←上官←敵役、っていう誰かが誰かを好きなんだけど、好き同士はどこにも発生していないっていうせつない世界になってるわけです。

こちら↓上官です。

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こちらが↓主人公。

natalie.mu

そして↓わかりやすい敵役。一人で写ってるこの映画関連の画像が見つけられず。左下の男性です。上官は右上、主人公は左上にいますね。

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さてBLの話はこの辺にして、映画の時代設定について。原作は、第二次大戦に敗戦後、ドイツの占領を経て復興に向かう、あったかもしれない過去が舞台のところ、実写版は2029年と、すぐそこに思える、あるかもしれない絶妙な近未来が舞台で、SFしすぎてないところが現実とのシームレス感が感じられて怖かった!

主な武器は銃火器なのですが、攻撃用ドローンや現在、中国で導入されている顔認証システムが、中国のお隣の韓国という民主主義社会で実用化されているという設定のリアルさ。ボストンダイナミクス社の歩行ロボが攻撃用として出てこないのが不思議なほど。公安の部隊は少佐のいない9課のようでもありました。

 

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また、作中で南北統一に反対する四カ国に日本が入っているのも、保守リベラルを自認して日本の中にいる身としてはリアルです。日本の貿易相手国上位に韓国は常に含まれていますから、南北統一に日本が反対して経済封鎖したり経済制裁したら、映画の中のように韓国の景気は悪化するだろうな、と考えられるし。

 

日本の主な貿易相手国 | JFTC キッズサイト | JFTC - 一般社団法人日本貿易会

 

そんなふうに、現実世界とかなりリンクさせつつも、原作を再現できるところはできるだけ採る制作陣の、積み重なる押井守愛のトドメを感じたのが、実写版エンドロール。アニメ版のエンドロールでも流れたこの曲が使われていたのです。アニメ版では痛切に胸を締め付けられる気持ちになるのですが、実写版ではアニメ版とは結末が異なっているので、別の意味でいろいろ考えてしまいます。せっかく上官が逃がしたのに、人狼は人の気持ちがわかるとはいえ、やっぱり人間とは一緒にやっていけないのだろうな、とか。

 

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それにしても、これを映画館の大画面で見られないのは残念です。期間限定上映とかやってくれないものだろうか。

 

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