『マシュー・ボーン IN CINEMA/シンデレラ』@恵比寿ガーデンシネマ
東京は恵比寿で十一月二十三日までなので見に行きました。映画ならエンドロールになるところで思わずというか、思いがけず落涙。舞台は1940年の空襲下のロンドン。そこでは田舎に疎開もできない庶民はみんな、男女関係なく「灰かぶり(シンデレラ)」だったんだよ、というマシュー・ボーンの祖父母世代への思いを受け取ったと感じたからかもしれません。とにかくみんな灰色バリエーションか黒白、軍用カーキ色メインで、シンデレラの白と銀の「舞踏会」ドレスと真っ白な天使以外はくすんで煤けているのです。
ストーリーは家の中で存在感のないお父さんのやるせなさとか、ゲイなのを母に押さえつけられてる兄弟の行く末とか、主役だけにフォーカスが当たっているわけではない丁寧な人物造形はさすがマシュー・ボーン。ほかにも邪悪なのは継母だけで、姉さんたちはそれに引き摺られてただけで、芯から意地悪じゃないのもよかった。天使は『ベルリン 天使の詩』からのインスパイア+仙女のキラキラ感という感じ。
そんな翻案っぷり、演出・振り付けの無駄のなさは、シアターオーブに来日公演を見に行かなかったのをちょっと後悔。ただ、わたしにとってシアターオーブはあまり見やすい劇場ではないので……。Bunkamuraだったら行ったんだけどなあ。