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霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

コンビニのない温泉場

今週のお題は「夏休み」ということなのだそうだが、ゴールデンウィークや令和の十連休、お盆休みなどのない仕事であり、かつ暑いのが超超超苦手なので、わたしは夏どまんなかにお休みをとることはない。長期休暇をとっても、暑くて結局なにもしないからだ。

というわけで、涼しげな春の新潟の温泉の思い出を記すので、暑いのキライな同志のみなさま方は、涼を感じて行ってください。

 

 

一人になりたいとき、みなさんは旅行したりするだろうか。わたしはする。特に職場で自分の力ではいかんともしがたい状況に耐えなければならないときなどは、休みが取れると旅行に行く。休みが取れないと会社近くのビジネスホテルのレディースプランでリフレッシュするということもあるが、今回は、ベテラン不足に次ぐベテラン不足(異動・転職など。異動については補充なし)、統一選対応、新入社員対応、令和対応、十連休対応などが重なって疲れ切り、三連休になったので突発的に温泉に行ってきた。

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新潟名物の重たい空と、途中の新津駅前にあったホテルのエドワード・ゴーリーみでまず涼しくなっていただきたい

温泉といっても箱根とか熱海とか、カップルが温泉街や駅前でキャッキャウフフしているようなところは一人になりに行くのに向かない。今回わたしが向かったのは、政令指定都市新潟市新潟駅から、ダイヤがうまく接続できれば一時間ちょっとで着く、こじんまりした温泉場・咲花温泉だ。

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旅館のすぐ裏に磐越西線、駅舎からは小山が見える

なぜ温泉街ではなく温泉「場」なのかというと、ここは駅前からまばらにある温泉旅館と民家を通り過ぎて十分足らずで一番奥まで着いてしまうほど小規模でコンビニもないからだ。例の歌になぞらえればこんな感じである。

 

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街は「商店が立ち並ぶ通り」であり、「家々が密集する地域」である「町」の発展したものだが、ここは町ほどの規模もない。だから温泉街ではなく、温泉「場」と呼びたい。

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旅館からの阿賀野川どーん、駅舎からの和む風景

さて、わたしは当初、東京を14時近い新幹線で出、16時前に新潟駅に着き、そこから16時過ぎに信越本線で新津に向かい、そこで磐越西線に乗り換えて咲花に着く予定だった。しかし前日、職場での様々な対応事項に疲れ、最後の十連休対応で、責任こそ自分にはないものの、他人がそのミスをしたのを見たら、「なぜ気付かない?」と思うことをしでかしてしまったので、かなり落ち込んでいた。

それをひきずっていたのか、新津でうっかり磐越西線への乗り継ぎを逃してしまった。次の電車は約1時間半後……。その前の、目的駅の一つ前まで行く電車に乗るか悩む。目的駅までは3キロちょっと。しかし雨の中、初めての道を3キロはちょっとなあ、と当初予定の電車を待合室で待つことにする。修羅場で疲れてなければ、あるいは雨じゃなければ行ったかな。

しかもその次の電車でどうやら高校生の帰宅時間にぶち当たってしまったらしく、かなりの混みよう。一人になりたくて旅行してるのになんぞこれ……。さらに高校生男子がリュックに吊るしたゴツいスニーカーがゴスゴス当たったりして、日常感がありまくり。19時半過ぎに咲花駅に着いたときはもはやヘロヘロだった。

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とりあえず、ごはん、ごはんをたべさせてください……

とはいえとにかく、すきっ腹で温泉には入れないので、まず晩ごはん。あちこちにいろんな山菜が使われていてうれしい。山菜の食べられる季節の終わりに間に合ったのだろう。

今回は、晩ごはんの時間と貸切露天風呂の時間をなるべく離すことに成功したものの、食後はおなかいっぱいすぎて動けない。釜炊き魚沼産コシヒカリのごはんを食べ切れず、今回も夜食用おにぎりにしていただいた。それでもこの宿は日本旅館では量が多くないほうだと思う。もちろん少なくはない。

そんなわけで、露天風呂の貸切時間まで、温泉に来てまで持参のタブレットでダウンロードずみのネトフリ番組を見て過ごす。

そしてとうとう温泉である。貸切露天風呂独り占め楽しかったです。お風呂に持っていく籠がリニューアルされて、コンパクトになってた。あと北国なので、五月上旬のこの季節でも、お風呂上りにはまだストーブが待ってる。選べる浴衣は自分では買わなそうな柄の向日葵にしてみた。なおタビックスは私物です。といっても、もともとどこかの温泉でもらったものだけど。

なお、晩ごはんであんなにおなかいっぱいになったのに、温泉に入ってまたネトフリ見てたらおなかがすいてきて、食べられなかったごはんで作ってもらっておにぎりを2個とも食べた。連泊したら5キロは太りそう……。

 

ところで、この温泉旅館に泊まるのは三度目なのだが、 値段がいわゆる温泉旅館の価格なのに対して、 「友達の田舎のばあちゃんち」感40%・「民宿」感35%・「温泉旅館」感25%という感じで、かなりほっといてくれるので、至れり尽くせりの温泉旅館を求める人には向かないかもしれない。むしろそういう人は、咲花温泉には皇太子が泊まったので貴賓室のある宿もあるのでそちらを。泊まったことないから至れり尽くせりかは不明だけど、たぶん碧水荘よりおもてなししてくれるんじゃなかろうか。

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食後にまったりしてから広い貸切露天風呂。浴衣もかわいいのを選べます

つまりそれくらい碧水荘はほっとかれる。ただ、一人での旅行でとにかくほっといてほしいわたしにはこれは最高なのだ。それもただ単に手抜きでほっとかれるというわけではなく、帰りはチェックアウトから電車の時間まで一時間近くあるので、ロビーで読書してていいか聞いたら、ストーブをつけてくれ、サービスでコーヒーを淹れてくれ、地元紙を持ってきてくれ、あとはロビーからもばばーんと見える阿賀野川と山の前でほっといてくれる。そういうほっといてくれる加減。

今回の帰りも駅まで歩くつもりだったが、「雨が降ってるから」と車で送ってくれた。断ろうかと思ったのだが、前回、冬に来たときに「雪もやんだし」と断って歩き始めたらさすが山の天気、二分もしないうちにいきなり吹雪き始めて目と口に大量に雪が入り込んできて文字通り閉口したのを思い出したので。

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お部屋に入ると阿賀野川。お風呂に持っていく籠がリニューアルされていた

今回、ちょっと誤算だったのは部屋。前回、前々回は満室だったからか、フロントから一番遠い部屋で、それがよかった。部屋は綺麗に掃除はしてあるけど古い日本家屋の広い部屋で、カメムシがけっこう入り込んでたりして、かなり「友達の田舎のばあちゃんち」風情。

けど敷地の一番奥で、障子を開けると床から天井までガラス張りの窓になっていて、目の前一面に阿賀野川、そして山というのがいい部屋だった。障子の下半分を開けて、寝ながら阿賀野川を眺めることもできた。

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朝ごはんは品数多め野菜多めだけどあっさりめ。ごはんとお味噌汁はおかわり自由

今回も予約したのが旅行間近だったので、案内の際に「フロントから遠くてすみません」と謝られるこの部屋かなとなかば期待していたのだが、今回はフロントすぐ上の、カメムシが入りようもなく綺麗に改装された部屋だった。トイレとか洗面所は前の部屋より快適、阿賀野川を望む窓が床から天井までガラス張りなのは変わりなく、前の部屋の昭和な椅子とテーブルと違って、おしゃれで快適な椅子と足置きが設置されている。

ただ、前の部屋より少し狭い=窓の幅も狭いのと、障子の下半分を開けられないので、景色への没入感は少々落ちる。朝風呂のあと、景色を見ながら二度寝したかったのだが、そうすると障子を全開にすることになり、まぶしくてなかなか寝入れなかったのは残念。
それでも障子を全開にして景色を見ていたのだが、山と川が美人すぎてニヤニヤするほどで、寝入るのに時間がかかった。

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12時チェックアウトにしたので朝食後、共同浴場へ。出たらサービスの薬草茶を飲みつつお庭を見て和む

この温泉場はたぶん碧水荘以外の宿もそういう造りだろうけど、お風呂からも部屋からも見える山と阿賀野川を前にしていると、温泉は自分が自宅で入るより少しぬるめなのが長風呂を誘うし読書も中断してしまうので、三連泊とかしたらなにもかもどうでもよくなって、現世に戻れなくなるんだと思う。二泊したことはあるけど、その時もかなり危なかった。今回は二泊めの予約がとれなかったから一泊だけで帰ってきたけど、ほんとは二泊したかったなあ、と帰ってきた翌朝にネットを見たら、上越新幹線止まってる……。うわー、これ二泊できてたら、明日仕事なのに帰れないとか、帰れてもすごく疲弊したとかそういうパターン?

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ロビーからも阿賀野川どーん

以上、十連休じゃない人が仕事の修羅場でがっつり白髪が増えた後に、地味な温泉場に一人になりに行ってきた話でした。

これまでここには秋、冬、春と来たけど次はいつかな。夏は……、新潟の夏はわたしには過酷なので、ちょっと無理かも。

ああ、早く涼しい秋になって、温泉がちょうどいい頃合いにならないかなあ。

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ロビーでこんなにだらだら過ごしていいのか、というリラックスぶり……