消すと増えるよ
#boysdancetoo というタグをあちこちで見かけて「なんだろう?」と、気になっていたのですが、つまりこれが発端なのでした。
アメリカの保守層的な感覚だと、王子たるもの逞ましく男性的にのみ成長すべきで、白タイツなんぞ履いて踊るべきじゃない、ってことなのでしょうか……。
けど、なんにせよ、他人の、しかもまだ小さい男の子の選択を、大の大人が公共の場で寄ってたかって嘲笑するなんて、無教養きわまりないし、いじめと言われてもしかたのないことです*1。 ジョージ王子のひいお祖母様のフィンガーボウルのエピソードの洗練された教養と対極ではないでしょうか。
なおこのキャスターはその後、インスタグラムで謝罪らしきものは出しましたが、どうやらその投稿へのコメントを消しているようですね。
一つもコメントが付いてなくて変だなと思ったら、その一つ前の投稿に15,000以上のコメントが殺到*2。そしてこうした指摘がちらほら。
さらにその前の投稿にも、その前もその前にも、短いもので「恥を知れ(shame on you)」「いじめっ子(bully)」「ひどい性差別主義者(very sexist)」「あなたにはがっかり(disappointed in you)」「まだクビになってないの(R u fired yet)」のコメントが連綿と……*3。ウェブの特性、「消すと増える」そのものですね。
長文となると「あんな上っ面の謝罪じゃなくてちゃんと自分がホモフォビアで性差別主義者でしたって認めた上でのまともな謝罪が必要では」というものや、スマホでもスクロールしないと読み切れないくらいの長さで懇切丁寧に「バレエはあなたの思ってるようなものじゃない」と説くコメントもたくさん。ふだんは静かなバレエファンが一気に立ち上がっている感じです。
さて、この件はダンスマガジンが言うように、ジョージ王子について揶揄したことが問題なのではなく、また、男子がバレエのクラスを取っていることについて悪意的に取り上げたことが問題なのでもなく、ひとは誰でもそれぞれが楽しんでやっている選択肢を理由にいじめられるべきではないってことなんです。
this isn't just about Prince George, and it isn't just about ballet classes. It's about the fact that no one should be bullied for what they enjoy doing. And we refuse to condone it. @gma
— Dance Magazine (@Dance_Magazine) August 23, 2019
https://t.co/UARvtmJhP3
大人が公の場で、反論できない(王族だし、六歳の子どもだし)相手をいじめていちゃあ、子どもの間のいじめもなくなりません。このキャスターは息子さんや娘さんがいるようですけども、その子どもたちが今回の件で友だちからいじめられたり距離を置かれたりされたら、どうするのかと思います。
なお、バレエをやっていることでいじめられたことのある男子は全体の85%とのこと。バレエをやりたいのになかなかそうできなかった『リトル・ダンサー』のビリー・エリオットを思い出して、胸が痛みます。でもあれだって、1980年代前半の話です。あれから35年も経っているのに、いまだに子どもの可能性を性別で縛るような大人が大手を振ってTVに出ているとは!
と、書いていたら、さすがにマズいと思ったのか、男性ダンサー三人との対談を含む、長い謝罪が出ました。記事の後半、タイムズスクエアの300人ものダンサーの動画に圧倒されます。