『ホフマニアダ』『マイリトルゴート』@東京都写真美術館
恵比寿の写真美術館で『ホフマニアダ』と『マイリトルゴート』。『ホフマニアダ』はもう少し家から行きやすい渋谷のイメージフォーラムで、けっこうな期間かかっていたのに、気づいたのが終映間近で、次にスクリーンで見られる機会をうかがっていました。
その『ホフマニアダ』は、幻想文学ファンにはもとより、バレエ好きには『くるみ割り人形』『コッペリア』で知られるE.T.A.ホフマン(エルンスト・テオドール・アマデウス・ホフマン)ことエルンストが、まだ何者かになる前から自身の想像の世界を作品にし、劇場監督になっていくまでの内面世界。
ホフマンは主に作家として知られていますが、作曲もするし絵も描けば劇場監督もするし音楽評論もし、もともとは法律家で晩年は裁判官と作家の二重生活を送っていたこともありと多才なだけに*1、頭のなかがとっ散らかっていたんじゃないか、という妄想を掻き立てられる作品でもあります。
エルンストが周囲の小役人な同僚をくるみ割り人形のネズミたちに見立てたり、砂男の幻影に苛まれ続けたり、現実の女性や理想の女性に心移ろったりが、美しくも妖しいパペットアニメで描かれるのですが、想像の世界の登場人物たちは存在が純化されて描かれるのに対し、現実世界の人々はものすごく人間臭い対比が面白い。そしてその二つの世界を股にかけるコッペリウスこと砂男!
ホフマン作品だけでなく、おやゆび姫オマージュのようなシーンも素敵でした。エンドロールで流れるメイキングで、人形の実際の大きさがわかります。
写真美術館では一日一回午前11時の回のみで早起きして向かいましたが*2、わたしはふだんまだ寝ている時間なので、何回か一瞬の寝落ちをしてしまいました。無念……。
ひとつだけ納得できないのは、砂男が集めた目玉の質感。ぬめっとしてなさそうな、単なる木の玉に虹彩を描いてまつ毛を付けたような。そもそも目玉だけなのに、なぜまぶたの付属品のまつ毛が目玉に直接付いているのか? せめて表面に透明の樹脂の膜を纏わせてほしかった。