新型コロナ後の『ヘンゼルとグレーテル』
「ちょっとおばあさん、このお菓子の家、困るよ~」
「なんだね駐在さん」
「新型コロナのウイルスが心配だから、一つずつ個包装にして家の屋根や壁に吊り下げたり貼り付けたりして。あと二人以上がお菓子の家に近づいたら、二メートルずつ離れてもらってね」
「子どもでもかい?」
「そう、子どもでも。あと、並んでるときだけじゃなくて、家の壁に沿ってお菓子を選ぶときも目を配ってね」
「やれやれ。個包装って、クッキーもかい?」
「クッキーは何枚か詰め合わせ、飴やジェリービーンズ、グミなんかは小袋アソートでもいいけど、とにかく空気に露出しないように、くしゃみや咳での飛沫感染を防ぐためにね」
「……」
「あ、あとお菓子の材料を買いに行くときは」
「三日に一度にしろっていうんだろ。ふん、ばあさんだからね、お菓子の家一回分の製菓材料なんて重くて重くて。新型コロナの流行る前からずっと通販ですよ! 野菜なんかもネットスーパーにしたよ。コロナがおさまったらこっちの筋力・体力が減退してんじゃないかと心配だよ、まったく」
「あはは、おばあさんは大丈夫でしょ! そうそう、マスクが足りなくなったら駐在所に電話してね。じゃ、ぼくは巡回に戻ります。あ、ちょっとそこの魔女の方~、そのりんご、販売するときや渡すときはマスクを着けてね。販売先が『3密』で感染しちゃうって例もありますから~」
お題「#おうち時間」