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安野モヨコ ANNORMAL展@世田谷文学館

◆会場にて

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安野モヨコ展、素晴らしかった〜。平日だからか人も少なくて、ゆっくり見られました。殺人的に暑い日だったので(ってもうここしばらくずっとですが)、会場の世田谷文学館最寄りの芦花公園駅に着いて、まずはレモンミルクのかき氷。すごく暑い日で自分が蓄熱してないと、クーラー効いた室内でかき氷食べられないので「今日だな!」と。なお蓄熱が足りないとすごい勢いで内臓が冷えておなかがいたくなります……。
 
そして食後は暑いなか世田谷文学館へ。モヨコ先生のサインがある入り口から入って、生原稿、生原画の、印刷には表れない筆圧みたいなものや、印刷物より綺麗なカラーをうっとりと眺める。金色はやっぱり生の方が美しいですね。すべて撮影可だったけど、スマホのカメラには目で見たとおりの美しさが残らないので、あまり紙の作品は撮りませんでした。
 
でも、モヨコ先生が自ら自分サイズに復刻されたというアンティーク夏着物にはもう、うっとり!
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また、『オチビサン』の着色はPCだと思っていたので、制作過程の映像を見て、物凄く驚きました。その映像を見て振り返ると展示してある、金色の施された生原稿が特に美しい!

 

そんなこんなで1時間半くらい見てました。帰りに図録や手ぬぐいなどを大人買いして帰宅。途中で手持ちの現金で収まりそうになくなり、「カ、カード使えますか?」と世田谷文学館の方に詰め寄るように聞いてしまった。我ながら挙動がオタクっぽかった……。

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 ◆帰宅して

安野モヨコ ANNORMAL (コミックス単行本)

安野モヨコ ANNORMAL (コミックス単行本)

 

帰宅してから買ってきた図録を読んだ。モヨコ先生のロングインタビューを読んだら、これまで薄々感じていたことが詳細に書いてあり、「ああ、やっぱり」と悲しくなる。『監督不行届』でカントクがモヨコ先生について語る部分で、「あー……、これは……」と思っていたけれど、やっぱりか、と。

監督不行届 (FEEL COMICS)

監督不行届 (FEEL COMICS)

 

 

それは、実家のスケープゴートで搾取子で、今もその実家に仕送りしているモヨコ先生の、哀しみを超えた諦念に満ちたインタビューだった。

わたしが「すごい」「面白い」「かっこいい」と読んでいたモヨコ先生の漫画は、実家に仕送りするために必死で描いていたものだったというのを読んで、つらくなる。

 

子どもの頃から虐待されて心を折られ続けてきたから、こんなに才能に溢れているのに、「自分には才能がないと思っている」「才能がないならないなりに『やっていくしかないんだな』という気持ち」、そんな諦念にモヨコ先生は染められてしまっている。

カントクが「安野さんが自分を肯定することにかけているブレーキ、リミッターが外れたら『ものすごいことになる』」と期待を込めて思っていても、親から否定されてきたことによる箍は心理療法でも外れず、むしろ年々、強くなっているという……。

 

家にいて漫画読んでるだけでいきなり怒られるとか、自分が受けてきた虐待を思い出したのもあり、泣いてしまった。あと、カントクのモヨコ先生への言葉も泣けた。そして、モヨコ先生が少しでも心の平安を得られますように祈った。モヨコ先生が描いてるほうが生きやすいならそれで、描くのがつらいならお休みしてほしいです。

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右下のカントクの言葉、ソムリエさん相当困ったのではなかろうか

そしてわたしは会期中にもう一度、世田谷文学館にANNORMAL展を見に行こうと思いました。このインタビューを読んでからだと、見え方がぜんぜん違うと思うから。