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東京バレエ団「M」モーリス・ベジャール振付@東京文化会館

三島由紀夫没後50周年記念公演とのことで十年ぶりに上演されるバレエ、三島由紀夫をモチーフとしたベジャール作品「M」を見てきました。

 

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ベジャールが能や狂言、歌舞伎、盆踊りの日本の踊りの動きに精通していて、スムーズにバレエに取り込んでいるのは憎たらしくなるほど。

幻想的なところは泉鏡花を思わせるところもあり、三島の鏡花への評価はどうだったのだろう、と確かめたくなったり。最初と最後に三島を導くお祖母さんは、若いお母さんだったら鏡花の世界だよなあと思いながら見ていました。周りは『天守物語』のごとく、人間ではない美しい海の精たちに囲まれているわけだし。

和弓のシーンは、「もちろんこの後に聖セバスチャンが現れるんだよね」と思ってはいてもヒリヒリする緊張が漲り、満月のような鏡と、海のように波打つ膜も面白かった!
ダンサーが仰向けで大の字や腹這いになると、鏡のなかでは磔になっているようで、聖セバスチャンからの連続かなと思ったり、あの膜の上でよく滑らず踊れるなあとヒヤヒヤしたりとか。

あと、あんな大きな鏡を歪みなく作るのって凄いな、とか、金閣寺のシーンの背景のあれは茶室のにじり口なのかな、とか衣装の色は初演からこれなのかな、とか踊り以外にも気になるポイントがあり、舞台上でもあちこちでいろいろなことが起こるので、目が忙しい舞台でした。

そして、自分でも意外だったのは、今まで三島由紀夫にそう思ったことはなかったのに同情の思いが湧いたこと。死なないとペルソナを統合できないところまで来てたんだなあ、という同情なので、三島はそんなふうに同情されるのは厭だろうけど。

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