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霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

『アイヌモシㇼ(AINU MOSIR)』@ユーロスペース

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思った以上にガツンとやられた映画だった。去年、旅行してきた先を舞台に、いかに自分が彼らから簒奪し続けているかを突き付けられるのだ。

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同時に、じゃあ洋服を着て椅子とテーブルで生活して、チベット人という少数民族支援を細々と支援している自分はなんなんだ?という気持ちにもなる。そんなこんなで打ちのめされて、日本民藝館で特別展『アイヌの美しい手仕事』をハシゴするつもりが、そのまま帰ってきてこれを書いている。

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映画は、冒頭の位牌と前半の仏事が、まずもう居た堪れない。ここがキツかったのは、日本で宗教的にマイノリティなカトリック・コミュニティで、仏事をほとんど知らずに育ったわたしの事情もあるとは思う。もちろんキツいだけではなくて、最後にまた位牌が写るシーンまでに、「あれ、じゃあ押し付けられてる仏教的に送る儀式は無効ってことなんじゃ?」と、思わせてくれる。

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ただ、そこまでの要所要所で、アイヌの人々が日本語で明治時代のアイヌの出来事を学んでいたり、儀式の最中にふとカメラが写すのは「カタカナ」で音写されたアイヌ語の奏上文だったりと、ところどころに居心地の悪いシーンが挟まれる。だが、それこそがこの映画の存在理由の大きな一つだと思う。

また、演者がみんな素晴らしく、ある意味、物静かなアイヌ版『ミッドサマー』であり、かつアイヌ自身がアイヌを演じている点で、より良作だと思う。

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あと、リリー・フランキーは胡散臭いおっさん演らせるとほんと上手いね! 彼の存在が、映画のドキュメンタリー的な部分と現実的な作劇部分、ファンタジックな部分を繋げる米糊的な役割にもなっているのではないだろうか。

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