松本駅のドッペルゲンガー
先日、上高地でStudens for a Free Tibet Japanのメンバー有志で、フリー・チベット・ピース・ウォークをしたことを書いた。ところで上高地は中部山岳国立公園に含まれ、かつ国指定の文化財のため、マイカーでの進入が制限されていて、行くのにいろいろ手順を踏まなければならない。
東京からだとまず松本駅へ、そこから松本電鉄上高地線で新島島駅へ、そこから沢渡バスターミナルへ、そしてそこから上高地行きバスへ、あるいは車で乗り合わせて沢渡バスターミナルへ、そこで車を駐車場に止めて上高地行きバスへ、という手順だ。けっこう面倒なように思えるが、それでも行くと、来てよかったなあと思う。
ところで今回もこの手順で、東京からスーパーあずさで、あるいはホリデー快速ビューやまなし号、もしくは高速バスでと、松本駅に集合したわたしたちに、思いもかけぬ白昼の怪異が起こった。おわかりかもしれないが、ドッペルゲンガー現象である。
しかし、今回はわたしではなく、参加者のなかで唯一の地元在住で、車で来て運転してくれるMさんのそれであった。われわれは眼下に線路と遠くに山並みがガラス越しによく見える松本駅のアルプス口(松本城側とは反対の方)に集まることにしているのだが、そこに五人のうち三人が集まったところで、ではアルプス口から出てMさんと落ち合いに駐車場に向かおうとした。すると、ガラス窓の並びにMさんがすでにいるではないか。
わたしが「ああ~(来てたのね)」と「おお~(こんな近くに)」の中間のような声をかけたところで、そのMさんと思われるひとが怪訝そうに我々を見た。別人だった。しかし、別人だとわかっても、Mさんにそっくりなのだ。身長、体型、髪形、メガネの感じなどなど。「あ、すみません」と謝ってアルプス口の出口に向かったが、わたしだけでなく、三人が三人とも「に、似てた」「似てたよね」と言い合った。
そして、アルプス口から出て、無事、本物のMさんと落ち合ってその話をしたところ、「うん、いるみたいなんだよね、生活圏内に何人か……」「あと、わたし善光寺でSFTJのTさん(善光寺の関係者でもある)のドッペルゲンガー見かけたこともある」「あと、SFTJのOさんのドッペルゲンガーも」などと言うではないか。意外と世界はドッペルゲンガーに満ちているようなのである。
そのあと車中では、「じつはみんな自分がオリジナルだと思ってるけど『わたしを離さないで』みたいにスペアで、たまたまスペアの用を為さないでこの年まで生き延びただけなのではないか?」「いや、スペアとして使われても、使われた時点でオリジナルに同化するから、気づいてないだけかも」などという話で盛り上がったのだった。
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