『文体練習』
さて、レイモン・クノーの『文体練習』を読むとき、思うのは翻訳者の日本語力についてということだ。
『文体練習』は明治学院大学フランス文学科のサイト内にある、翻訳者・朝比奈 弘治本人のページによれば「ひとつの出来事を99通りの文体で書きわけた、おかしなことばの変奏曲」となるわけだが、たった1ページに収まる出来事が、原書でそれだけのバリエーションでもって表現されていたとしても、翻訳がマズければ、完全な99通りは実現しない。
そこを、このフランス文学者は、ラテン語ふうフランス語で書かれた原文を漢文書き下し文として意訳したりなど、おおよそ考えつく限りの、そして「その手があったか!」と驚かされる手法で99通りを日本語でも実現させている。
この、装丁自体もフランス初等学校の文法書みたいな驚異の本に関しては、すでにさまざまな、それらを読むだけでも愉しい書評が出ている。ぜひ、読んでみてください。そして、気が向いたら『文体練習』を、さらに、フランス語を習う人/習っていた人なら原書もぜひ。
www.yamiyo.info─書評空間─
http://www.yamiyo.info/archives/book/ISBN4255960291.php
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- Small Talk--
http://www.weabe.com/smalltalk/book_exercice.html
朝比奈 弘治本人のページ
http://www.meijigakuin.ac.jp/~french/professeur/asa.html
それにしても、フランス語を習い始めた当初、この本に出会っていたら、文法練習ももう少しは苦ではなかったかもしれない。