読んだり食べたり書き付けたり

霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

2018-03-01から1ヶ月間の記事一覧

夜桜連想

夜桜を眺めながら一人で歩いていると、ほの白い花に、早逝した友だちの顔を思い出す。白い花が、お棺のなかの白い顔を思い出させるのだろうか。 若くしてこの世を去った友だちについては、こちらが年経るごとに、「なにか手立てはなかっただろうか」という思…

いえのなか 《連作短編集「デッドロックのはずれ方」4-1》

「じゃあ月曜にねー」 詩緒がバスの中から手を振り、実佳と久実も手を振った。バスがのそりと車線に戻る間に、二人は歩道を走って歩道橋まで行き、階段を駆け上がると手すりに肘をのせ、そこに顎をのせて、そこからバスを見送った。 「今日、なんかごめんね…

手の重さ 《連作短編集「デッドロックのはずれ方」3-2》

「この曲、終わったら音楽室に入って聞こうか?」 「だね、そろそろあの曲を歌う順番なんじゃない?」 実佳と詩緒が小声ではしゃいでいる。そういえば曲は、休みにみんなで見に行った映画の曲だ。吹奏楽部見学のお知らせには、演奏をバックに見学者全員で歌…

気まずいドッペルゲンガー

幼少期からドッペルゲンガーには迷惑をかけられている。幼少期から思春期にかけてだけなら、自分とその同年代の周囲の精神不安定によるもの、ということもできるかもしれないが、ことはそう簡単ではない。ということは過去に書いた。 mmc.hateblo.jp 最近で…

手の重さ 《連作短編集「デッドロックのはずれ方」3-1》

久実は音楽室のある四階手前の踊り場まで一気に駆け上がり、そしていきなり座り込んだ。 (なにも知らないくせに!) (だからバカで愚鈍な男子ってキライ!) (なにが久実ちゃんだっての!) 怒りと憤りの思いとともに、フルートを強弱つけて吹くために鍛…

妹なんかじゃない 《連作短編集「デッドロックのはずれ方」2-4》

今日の午後、学校はにぎやかだ。グラウンドで駆け回るサッカー部員たちがあげる声が窓から入ってくる。体育館からはバレー部とバスケ部の試合が交互にセットされ、売店にパンを買いに脇を通ると、シューズが床を鳴らす音がキュッキュと響いてくる。 東校舎で…

オリオン座δ星から来た女

うちで夫の人と話していると、びっくりするような基本的なことを知らなかったりしてびっくりすることがある。びっくりする、というのはいろんなことを知っていて、教わることが多いので、その落差から。 ところで夫の人は時々こっちが襟を正す気分になるほど…

妹なんかじゃない 《連作短編集「デッドロックのはずれ方」2-3》

おっさんがかあさんといつから付き合い始めたのかは、よくわからない。もともと大工として作り付けの家具を直しにきたらしいが、かあさんと籍を入れるまでは、家に泊まっていったことが律儀にも一度もなかったからかもしれない。 かあさんは俺を連れて実家を…

妹なんかじゃない 《連作短編集「デッドロックのはずれ方」2-2》

その翌日、おっさんといつもの週末の食料買出しに出かけた先で、俺は西野久実とその母の買い物風景を見た。見た、というか、見られた、というか。先にこっちに気づいたのは西野母らしい。俺がおっさんに、「ねえ、なんかすっげえ睨んでるおばさんいるんだけ…

姿勢と治療

一か月ぶりに手術した東大病院に経過を見せに行き、病院手前で思わぬお花見をし、電子カルテ問題が解消されたのか会計まで意外と早く終わったので、出社前に整体にかかりました。 どの整体院に行っても言われるのが、身体の左側の筋肉の張りが強いこと。これ…

妹なんかじゃない 《連作短編集「デッドロックのはずれ方」2-1》

「あのな、お前には、その、妹ってのが、いるんだ」 夕飯のあと、いつもならすぐに晩酌に移るおっさんが、俺が食べ終わるのをシラフで待ってたのは、その話をするためだったらしい。 「なんだよ、それ」 「いや、お前ももう高校生だから、どこで耳に挟むかも…

放射線治療のメリット・デメリット

三月になって雪が降るのも珍しいので、今日はちょっと外出、セブンイレブンのイートイン席からお花見をしました。 さて闘病ブログ的な話を。 1.5センチ四方の乳腺内の乳管異形成を手術で切除、その切除した細胞を病理解析して、ようやくそれまでの「乳がんな…

冬ごもり前やけくそパーティ 《連作短編集「デッドロックのはずれ方」1》

「まじょ が あらわれた」 先輩の殊勝そうなうつむき顔のむこう、校舎の角、自転車置き場の柱の陰で様子をうかがっている久実を見つけ、美李はつぶやいた。 「ほんと、ごめん、こんなことになっちゃって」 脚を前にまっすぐ上げたら股間にスマッシュヒットす…

華麗なる加齢の馬脚

今年の3月11日は、長年共に活動している、コミケや文学フリマ的なものには不参加の大学文芸部OBサークルの活動日だった。去年の暮れにできたOB誌4号を囲んで合評会、黙祷の時間を挟んで会計報告、そして会計責任者の送別会と、やることたくさん。 OB誌はあれ…

肉、そしてスロギーとの邂逅

乳がん手術後は、手術が簡単なものであれ、大変なものであれ、下着選びを再考する必要に迫られます。 それについて、主に手術について図入りでちょっと生々しい話をするので、切り傷とか苦手な方は先に進まないで、このウィンドウを閉じて、お茶でもしに行っ…

錯誤と妄想

昔からなのだが、「りんごの唄」を脳内で勇壮に歌うと途中から「戦え!仮面ライダーV3」になってしまう奇病に悩まされている。つまり、こう。 赤いりんごにくちびるよせてだまってみている青い空りんごはなんにも言わないけれど父よ母よ妹よ風の唸りに血が叫…

ホワイトデーに

術後の放射線治療25日連続通院(ただし土日祝は除く)が終了! 夫の人が気を遣ってくれてか、今週のお題「ホワイトデー」的にいろんなものを買ってきてくれた。ありがたや。しかし、太らせて食べるつもりでは、という量なんですがそれは。 あとはバレエのレ…

一人暮らしの音と気配

初めての一人暮らしは、四大を卒業して就職して二年目からだった。就職した一年目はまだ毒親の洗脳がキツくかかっており、言われるがままに学部時代に住んでいたカトリックの女子修道会運営の大学生専用女子寮から、同じくカトリックの修道会経営ではあるが…

チベット・ピースマーチ

3月10日はチベット民族蜂起記念日です。ダライ・ラマ14世が亡命を余儀なくされた1959年3月10日のチベット民族蜂起を胸に刻み、世界中のチベット人とチベットを支持する人たちが、チベットの平和と自由を訴えるピースマーチを行う日です。 またこの日は、10年…

半可通の空目と妄想

出先のトイレの洗面台に置かれたスプレー缶に書かれた「shoshugen」を目にして、しばらく悩んでいた。ドイツには、ロイトリンゲン(Reutlingen)、テュービンゲン(Tuebingen)、ヘッヒンゲン(Hechingen)、ジクマリンゲン(Sigmaringen)、ドナウエッシン…

宗教の功罪

「日本の仏教の檀家制度が嫌い」という話から、夫の人と伝統宗教の話になった。 わたし:まあでもカトリックでも似たようなことあるしね。近代化された宗教の弊害だよね。 夫の人:カトリックでいうと教会への所属とかになるの? わたし:教会への所属だし、…

書籍検索機について

本屋さん店頭でよく見かける書籍検索機、よくお世話になっている。なってはいるのだが、この書籍検索機、いらいらさせられることも多い。 一つは、書店ごとにフォーマットが違うこと。某TK堂書店の書籍や著者入力欄では、「あいうえお」表が左から右に流れて…

和菓子屋さんで

今週のお題「ひな祭り」 のディスプレイ。お雛様、菱餅、瓢箪は当然のことながら、巻物や盃、そして桃の枝とその花や葉、散らした花びらまでもがお菓子で作られています。 もし自分に小さな娘がいたら、来年は一式、特注したい……、と思う素敵な眺め。

ゴッド・ハンズならぬ

ゴッド・アイといえばいいのだろうか。わたしのがんがステージ・ゼロの超初期で見つかったのは、12年間検診に通っていた杏雲堂病院のエコーの先生のおかげだと思っている。 いろいろと、持病というには軽度の不調を各種、子どものころから抱えているのだが、…