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父と食闘3・ダンキンドーナツとグリッシーニ
カップラーメン、缶詰みかんが好きではない父は、もちろんファストフードも嫌いだ。食わず嫌い、と言ってもよい。
しかしそれに対して母は、体に悪そうなものでも、いちおう食べてみる、ということをしていた。そんな母がダンキンドーナツを買い、いっしょに食べたあとのこと(もちろん父は食べなかった)。
「ダンキンドーナツはね、ダスキンが回収したモップの塵を小麦粉の代わりに使って、ドーナツを作っているんだよ」
わたしもこれにはさすがに騙されなかった、はず。でも、長じてダスキンが親会社のミスドは大好きで、ダンキンはどうもいまいち、だったのは、なぜだったんだろう…
さて、そんな父は、味がわかるとも思えない子どものわたしを連れて、いわゆる正統派の洋食を出す店に連れて行ってくれた。
そういうお店の最初の記憶は、おそらくキャンティなのだが、実は、食べたものに関しては、食事の前にむさぼりたべていたグリッシーニの味しか覚えていない。お店のたたずまいや椅子が高くて座ると足がつかなかったことなんかは覚えているのだが。
ちなみに、わたしがテーブル上の個包装されたグリッシーニをばりばりと剥き、ばりばりと食べているときに、父が言った言葉は忘れられない。
「それ、無料じゃないんだけどなあ…」
今にして思えば、父はそのころ非常勤講師時代であり、そんなに自由になるお金もなかったはずなのであった。なのに、娘は料理本体の味を覚えてなくて、ほんと申し訳ない。
ちなみに、小学校に入ってから連れて行ってもらったチーズフォンデュに関しては、家で食べるよりおいしい、と味の比較も出来る程度には記憶している。