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霊長類ヒト科アゲアシトリ属ジュウバコツツキ目の妄想多め日録

日比谷線と銀座線のあいだ

といっても東京メトロ路線擬人化BLではなく、匂いの話。


築地や新富町で仕事をしていると、帰りは築地駅から日比谷線に乗って、銀座駅で銀座線に乗り換えるという経路になります。このときに地下中二階みたいな長い通路を通るのだけど、毎夕ここにプロっぽい和食のおいしそうな匂いが充満していて、時間帯も相俟ってそれはもうたまらない匂いです。匂いは日によって違うのだけれど、肉じゃがみたいだったりサバを焼いてるみたいだったり。


ところで、匂いにプロっぽいもなにもあるものか、と思うかもしれませんが、「この肉じゃが作ってる人はじゃがいもが煮込みすぎてぐずぐずにならずに、いつもほっくり仕上げられるんだろうな」「ああ、このサバ焼いてる人は万一にも焦がしたりとかしないんだろうな」、と、思わされる安定感のある炊事の匂いって、ありませんか? この地下鉄の連絡通路に漂っているのは、そういう匂いなんです。けれど、地下中二階から地下一階に上がる通路に入ると匂いはしなくなる。あれはどこから漂ってくる匂いなんだろう… 


ところで匂いといえば、築地は寿司の街でさして匂いもないだろうと思っていたのですが、寿司屋が一位、二位がなくて三位が鳥料理屋というくらいに鳥料理をメインで出す店がたくさんあることを知りました。ある店などは、メニュー名が「鳥もも肉煮丼」。味付けや調理法じゃなく、素材名がついているのに驚き。味付けはいわゆる味醂と醤油による一般的なもので、築地本願寺から新富町方面に向かっては、その匂いがかなりいろいろな通りで漂うのです。



然程に鳥料理が多いのは、どうやら写真の「宮川食鳥鶏卵株式会社」があるためのようです。ここは営業時間中いつ前を通りかかっても、4〜6人ほどの頼もしきおっちゃんたちが巨大なテーブルを囲み、次々と鳥肉をさばいて部位ごとにまとめていく様子が見られます。


ここは卸のほかに小売りもしているようなのですが、昼休みの小売り窓口はいつも混み合っているので、詰めかけている人たちの頭越しに見えるホワイトボードの、卵や部位ごとに値段の書いてある鳥の生肉以外に調理された鳥肉やお弁当が売られているかどうか、わたしにはわかりませんでした。なにしろ写真のように、宮崎アニメに出てきそうな旧い大きな建物なのにくらべ、小売り窓口はとても小さいのです。


ちなみに写真は夕方撮ったもの。さすがに小売り窓口のお客さんは二人しかいないけれど、彼らはこれからの営業時間に備え、足りない生肉を部位ごとに買いにでも来た飲食店の人々だったりするのかもしれません。