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追悼 映像作家・岩佐寿弥特集『オロ』上映&トーク



チベットの少年のドキュメンタリー映画『オロ』、見るのは二度目なのにまたちょこちょこ泣いて、そのあとのトークショーはしかし、笑いこぼれるエピソードにあふれていて楽しい会でした。

最初はプロデューサーの代島さんの撮っておいた『オロ』撮影時や、映画美学校での、「積極的に老いを体験する」という岩佐監督のお話などの記録、オロからの監督へのメッセージ映像が流され、その後、大友良英さんと代島さんのこの映画と劇伴の成立についてのお話。

大友さんは依頼があった時は震災直後で忙しすぎて、物理的に無理だから断ろう、と思っていたのに、なぜか時間ができて送られてきていた仮編集映像を見てしまったら、オロの状況が福島の子どもたちと重なって見えて「もう引き受けざるをえなかった」とのこと。

ただ、実際に監督と代島さんと打ち合わせで会った際は監督からは具体的な注文はまったくなく、お互いの初恋について語り合ったのが印象的だったとか。そして二人の初恋の年齢は、映画撮影時のオロの年齢と重なっていて、結果的にその年齢の子どもが「自分の生活の場の外の世界という存在に気づき始める気配」と代島さんの表現するテーマ曲に繋がったそう。



そんなお話のあとに、大友さんが代島さんの「今日の気分で」というリクエストで持参のギターで(このギターを買ったときの大友さんの話も爆笑もの)オロのテーマを弾いてくださり、トークショー前半終了、そこからはさらに監督の作品のキャメラ歴の長い津村さん、映画の中のイラストを描いた下田さんも加わってのトーク

下田さんは大友さんとは逆に、岩佐監督の登場人物の似顔絵についての具体的ではない駄目出しに苦しんだというお話でした。「なんか、違うんだよねえ」「こういう顔じゃない」から始まり、「キミは実際に会ってないからね(憤)」とまで言われ、困ってしまったとか。このことについて下田さんが、「もうね、(登場人物の)みんなのことが好き過ぎるんでしょうねー」と感慨深そうに言っていたのには「監督、しょうがねーなー」という下田さんの岩佐監督へのラブと包容力を感じました。

ちなみに監督のお別れの会や、今回のアップリンクでの岩佐特集に使われた監督の似顔絵も下田さん作ですが、これもあちこちから「わたしの監督はこれじゃない」と言われたりして仕上げるのに大変だったそう。

最後は監督の奥様が客席からご挨拶され、お開き。キャメラの津村さんが大友さんに新たな依頼をされているのを小耳に挟みつつ、岩佐監督の遺稿集を買って帰りました。



それにしても。
この映画を初めて見た時は岩佐寿弥監督と加藤登紀子さん、Students for Free Tibet Japan のツェリン・ドルジェとその仲間の在日チベット人トークショーつきで見たのですが、それがこういう形で二回目を見ることになるとは。オロもメッセージ映像の中で言っていたけど、監督の訃報を、聞いたとき、冗談だと思いました、わたしも。

中島らもも岩佐監督も、階段から落ちて亡くなったことを思うと、ほんとに転倒って怖いなと思う。自分も普段から何もないところや階段で転びそうになっているだけに…。